0007 (成人の右大腿骨:腹面からの透視図)

J0007 (成人の右大腿骨:腹面からの透視図)
近位端を露出し、前方でそれを切断し、骨を取り除き、透明にした背側の半分、倍率1:1.
この図の要点をコンパクトに説明します。
- 何を示すか
- 成人の右大腿骨・近位端の断面像です。骨頭から転子部、骨幹近位を含み、海綿骨(骨梁)の配列が強調されています。1933年のSpalteholz図譜由来。
- 見どころ(骨梁アーキテクチャ)
- 主圧骨梁(principal compressive trabeculae): 骨頭上方から内側皮質へ向かう太い束。体重負荷を受ける圧縮力を伝達。
- 主張骨梁(principal tensile trabeculae): 骨頭から大転子方向へ扇状に走る束。歩行時の張力を担う。
- 副系の骨梁: 小転子周囲から骨幹へ向かう放射状の束など。
- ワード三角(Ward’s triangle): 圧系と張系の骨梁が疎になる三角形の透亮域。正常所見。
- 大腿骨のカルカー(calcar femorale): 頸基部内側で骨幹皮質へ連続する高密度の棚状構造。荷重の応力シェアに重要。
- 形態と力学のポイント
- 骨頭軟骨下は細密な梁で充填。関節反力の集中に適応。
- 頸部内側皮質は厚く、外側皮質はやや薄い。内外で応力状態が異なるため。
- 大転子は筋牽引(中殿筋など)の影響で張力骨梁が発達。
- これらの骨梁パターンは、転倒時の頚部骨折の生じやすい部位や内側・外側型の違いの理解に直結。
- 臨床的意義(要約)
- 骨粗鬆症ではワード三角の拡大や骨梁の粗化・断裂が目立つ。
- 人工股関節のステム設計や挿入角は、主圧・主張骨梁の走行と皮質厚の分布を参考に最適化される。
- 内側カルカーの温存は術後の応力伝達とステム安定性に寄与。
- 画像の読み方ヒント
- まず骨頭頂部から内側皮質へ向かう“太いアーチ”を探す(主圧骨梁)。
- 次に大転子方向へ扇状に広がる束(主張骨梁)を確認。
- その間にある透亮域がワード三角。
- 頸基部内側の高密度域がカルカー。
アノテーション
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A02_0866(大腿骨)Thigh bone →Femur; Os femoris【大腿骨】Femur; Thigh bone (A02_5_04_001)
00a
A01_0009(右)Right →Dexter【右】Right (A01_0_00_006)
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