0003 (大人の新鮮な右大腿骨の近位部、前方からの図)

J0003 (大人の新鮮な右大腿骨の近位部、前方からの図)
骨膜の一部が剥がされて折り返されました。
遠位部では、緻密質の前半部分が切断され、骨髄が露出しました。骨髄の一部が取り除かれ、髄腔が見えるようになりました。
この図は「新鮮な成人の右大腿骨の近位部(前方から)」を示します。骨膜の一部を剥がして折り返し、遠位側では皮質骨(緻密質)の前半を切り落として髄腔と骨髄を露出させています。主要部位は以下の通りです。
- 01 大転子:中殿筋・小殿筋・梨状筋など多くの筋の付着部。股関節外転や内外旋に関与。
- 02 腸骨大腿靱帯:前方で最も強い関節包靱帯。股関節の伸展や外旋を強力に制動し、立位での省エネ姿勢を支える。
- 03 大腿骨頭:関節軟骨で被覆され、寛骨臼と球関節を形成。
- 04 大腿骨頭靱帯:骨頭の窩と寛骨臼の小窩を結ぶ靱帯。成人では機械的強度は弱いが、骨頭への血管(円靱帯動脈)が走ることがある。
- 05 関節面(大腿骨頭):硝子軟骨で滑走。荷重分散に重要。
- 05a 関節軟骨:白色で平滑。摩擦低減と衝撃吸収を担う。
- 06 大腰筋腱:小転子へ移行する腱の走行が前面に見える。股関節屈曲の主動作筋。
- 07 骨膜:骨を覆う膜。栄養血管の通路で、骨折治癒に関与。図では剥離して反転。
- 08 髄腔:海綿骨内部の空間。長管骨の骨髄を収める。
- 09 骨髄:造血や脂肪貯蔵を担う組織。図では遠位側の断面で露出。
観察のポイント
- 前面構造が中心で、特に前方靱帯(腸骨大腿靱帯)の位置関係がわかる。
- 骨膜を剥がすと筋付着線や栄養孔が明瞭になる。
- 近位大腿骨は頸部骨折の好発部位。骨頭の血行は円靱帯動脈や外側大腿回旋動脈系に依存し、血行障害は壊死のリスクとなる。