0015 (右大腿骨、上端部:前面断図)

J0015 (右大腿骨、上端部:前面断図)
図の概要
- 右大腿骨近位端(前面からの断面像)。海綿骨(トラベクラ)の走行が強調されています。
見えている主な構造
- 大腿骨頭と骨頸部周囲の海綿骨
- 大転子側から骨幹へ向かう骨梁の束
- 骨端線(矢印で示示):成人では「骨端線(epiphysial line)」として痕跡的に残る線状構造。
骨梁(トラベクラ)のパターン
- 圧縮骨梁(主圧縮群)
- 関節面から骨頭内を放射状に下行し、頸部内側を通って骨幹へ。
- 体重軸の荷重を骨頭から頸部内側へ伝えます。
- 張力骨梁(主張力群)
- 骨頭外上方から外側へ扇状に拡がり、大転子側で骨皮質に合流。
- 歩行や筋牽引に伴う張力に対応。
- 二次群の骨梁
- ワード三角(Ward's triangle)
- 主圧縮群と主張力群に囲まれて相対的に骨梁が疎な三角域。骨粗鬆症で透亮化が目立ちやすい領域。
- カルカー・フェモラレ(calcar femorale)
- 頸部内側皮質から骨頭下へ立ち上がる板状の高密度骨。頸部内側の応力集中を分散。
臨床的意義
- 骨粗鬆症
- 骨梁の細化・消失によりワード三角の拡大が進み、頸部骨折リスクが上昇。
- 近位大腿骨骨折
- 主圧縮群が途絶すると内側型(内側頸部)骨折は転位しやすい。
- 人工股関節(THA)
- ステム設計や固定様式は、圧縮群と張力群の力学を再現・代替する発想に基づく。
- 画像診断
- X線で骨梁パターンと骨端線の痕跡を読むことで、年齢相応性や荷重伝達の異常を推定。