橈骨神経

橈骨神経は、腕神経叢の後神経束から起こる主要な神経の一つです。その主な特徴は以下の通りです:

橈骨神経は上肢の運動と感覚において重要な役割を果たしており、その損傷は手関節や指の伸展障害(手首下垂)などの症状を引き起こす可能性があります。

橈骨神経の支配する筋

1.上腕三頭筋(A04_0392(上腕三頭筋)Triceps brachii muscle☆) 2.腕橈骨筋(A04_0412(腕橈骨筋)Brachioradialis muscle☆) 3.肘筋(A04_0396(肘筋)Anconeus muscle☆)

4.肘関節筋(A04_0397(肘関節筋)) 5.回外筋(A04_0421(回外筋)Supinator muscle☆) 6.指伸筋(A04_0415(総指伸筋)Extensor digitorum muscle☆) 7.長橈側手根伸筋(A04_0413(長橈側手根伸筋)Extensor carpi radialis longus muscle☆) 8.短橈側手根伸筋(A04_0414(短橈側手根伸筋)Extensor carpi radialis brevis muscle☆) 9.尺側手根伸筋(A04_0418(尺側手根伸筋)Extensor carpi ulnaris muscle☆) 10.長母指伸筋(A04_0424(長母指伸筋)Extensor pollicis longus muscle☆) 11.短母指伸筋(A04_0423(短母指伸筋(手の))Extensor pollicis brevis muscle☆) 12.小指伸筋(A04_0417(小指伸筋)Extensor digiti minimi muscle☆) 13.示指伸筋(A04_0425(示指伸筋)Extensor indicis muscle☆) 14.長母指外転筋(A04_0422(長母指外転筋)Abductor pollicis longus muscle☆)

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J0470 (右上腕の筋(深層):背面図)

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J0577 (右上腕の動脈、背面からの図)

日本人のからだ(千葉正司 2000)によると

橈骨神経は、腕神経叢の後神経束の延長として発生し、その分節構成は一般的にC5-Th1です。Th1を欠いている場合もある(図59表72) (8.3%,川崎,1940 a; 6.3%, 式場,1947; 4.3%,白松,1951 b; 2.2%,宮薗,1958)。また、腕神経叢の内側神経束またはその枝からの交通枝が橈骨神経に合流することもあります(0.8%,荒川,1958 a; 40%,相澤ら,1994, 1995)。

橈骨神経は、上腕動脈の背側面に沿って大円筋と広背筋の停止腱の前面を下行し、上腕三頭筋長頭の前外側で外側頭と内側頭の間に進入し、橈骨神経溝に沿ってらせん状に走ります。上腕中央の外側部では、橈骨神経と皮膚との距離が最も短いとされています(河西・相山,1972; 鈴木,1988)。橈骨神経は、浅肩甲下動脈(山田,1967)の経路とも関連し、後上腕回旋動脈と肩甲回旋動脈に対し、前者の背・腹側、後者の内・外側の4経路を走行することができます(Adachi, 1928 a; 福山,1938; 森,1941 b; 浦,1962; 千葉,1986; 相澤ら,1995)。橈骨神経は、腋窩動脈によって貫通されることもあると報告されています(Adachi, 1928 a)。また、一時的に腋窩動脈の腹側を通ることもあります(森,1941 b)。

後上腕皮神経は、橈骨神経から上腕三頭筋の長頭筋枝と共同幹を形成しながら、または単独で起始し、細い動脈を伴行して上腕の背側にまわり、上腕中央位の後面の皮膚や上腕筋膜に分布します(Kasai et al., 1982; 角田,1982; 河西ら,1989)。後上腕皮神経の欠如例は見られないとの報告があります(河西ら. 1989)。また、この皮神経は、通常の皮神経と異なり、肋間上腕神経の後枝、内側上腕皮神経の深層に重複して分布し、主に筋膜に分布します。なお、堀口ら(1992 a)は、後上腕皮神経の枝が、背上顆筋M. dorsoepitrochlearisの遺残と思われる筋束に分布する2例を報告しています。