長母指外転筋 Musculus abductor pollicis longus

J0184 (右前腕骨:筋の起こる所と着く所:回外位の手の裏側からの図)

J0206 (右の手骨:および筋の起こる所と着く所を示すの背面からの図)

J0471 (右前腕の筋:前面からの図)

J0472 (右前腕の筋:手掌側からの図)

J0474 (右前腕の筋(第3層):掌側図)

J0476 (右前腕の筋:橈側からの筋)

J0477 (右前腕の筋:背面図)

J0478 (右前腕の筋:背面図)

J0479 (右前腕の筋(深層):背面図)

J0480 (右手の背面)

J0482 (右手掌の筋)

J0483 (右手の手掌の筋(第2層))

J0580 (右前腕の動脈:背面図)

J0941 (右前腕の神経:表面的な層からの図)

J0942 (右前腕の神経、深い層:前面からの図)

J0943 (右手掌の神経、表層)

J0948 (右前腕の筋肉の神経、後外側からの図)
長母指外転筋は前腕深部外側区画に位置し、母指の外転運動を担う主要な筋肉です。この筋は解剖学的・臨床的に重要な意義を持ち、手の機能において中心的な役割を果たします(Standring, 2015; Leversedge et al., 2010)。
解剖学的構造
起始部の解剖学
- 尺骨背側面:尺骨体の中央1/3部分の後面から起始し、この領域は前腕回外筋の停止部より遠位に位置します(Moore et al., 2018)
- 橈骨背側面:橈骨体の中央1/3部分の後面から起始し、特に橈骨後縁に沿って広範囲に付着します(Standring, 2015)
- 前腕骨間膜:橈骨と尺骨の間に張る骨間膜の後面から起始し、この膜性起始は筋の安定性に重要な役割を果たします(Netter, 2018)
- 筋束の配列:羽状筋構造を呈し、多数の短い筋線維が中心腱に対して斜めに配列することで、強力な収縮力を発揮します(Schuenke et al., 2020)
走行経路と解剖学的関係
- 前腕における走行:筋は前腕深層筋群の最外側に位置し、斜め下外側方向へ走行します。前腕遠位1/3で筋腹は細長い腱に移行します(Moore et al., 2018)
- 短母指伸筋との関係:発生学的に短母指伸筋と共通の起源を持ち、両筋は前腕遠位部で密接に走行します。約80%の症例で筋腹や腱の一部が融合または共有されています(Neumann, 2017)
- 第1伸筋区画:手関節背側で、長母指外転筋と短母指伸筋の腱は橈骨茎状突起上の第1伸筋区画(伸筋支帯の最も橈側の線維性トンネル)を通過します。この区画の幅は平均9-15mmで、個人差が大きいです(Ilyas et al., 2017)
- 解剖学的嗅ぎたばこ入れ(Snuffbox):長母指外転筋腱と短母指伸筋腱は、手関節橈側背面で明瞭な三角形の陥凹である解剖学的嗅ぎたばこ入れの橈側境界を形成します。この部位の触診は舟状骨骨折の診断に重要です(Netter, 2018)
- 橈骨動脈との交差:長母指外転筋腱は手関節レベルで橈骨動脈を背側から腹側へ横切り、この交差部は橈骨動脈の触診部位として臨床的に重要です(Moore et al., 2018)
停止部の詳細解剖学
- 主停止部:第1中手骨(母指中手骨)底の橈側面に強固に付着し、特に中手骨基部の背橈側隆起部に集中します(Standring, 2015)
- 付着面積:停止腱の付着面積は平均12-18mm²で、この広い付着面により強力な牽引力を中手骨に伝達できます(Leversedge et al., 2010)
- 副停止腱(副腱):臨床研究により約94%の症例で1本以上の副停止腱が存在することが判明しています。副腱の付着部位は以下の通り多様です:
- 大菱形骨(約40%):母指CM関節の近位
- 小菱形骨(約15%)
- 短母指外転筋の筋膜(約25%)
- 母指手根中手関節包(約10%)
- 橈側手根屈筋腱または橈骨茎状突起(約4%)(Bravo et al., 2010)
神経支配の詳細