小指伸筋 Musculus extensor digiti minimi

J0477 (右前腕の筋:背面図)

J0478 (右前腕の筋:背面図)

J0479 (右前腕の筋(深層):背面図)

J0480 (右手の背面)

J0581 (右手背の動脈)

J0948 (右前腕の筋肉の神経、後外側からの図)
小指伸筋は解剖学的に重要な前腕背側部の筋であり、以下の詳細な特徴を持ちます:
解剖学的特徴
- 起始:上腕骨外側上顆の共同伸筋腱から起始します。この起始部は前腕伸筋群の共通腱膜の一部を形成しています (Standring, 2020)。
- 走行:細長い紡錘形の筋腹を形成し、前腕の尺側を遠位に向かって走行します。筋腹は総指伸筋の尺側に位置しています (Moore et al., 2018)。
- 停止:細長い腱となって第5腱区画(尺骨茎状突起と三角骨の間にある線維性隔壁で形成される区画)を通過し、最終的に第5指(小指)の基節骨、中節骨、末節骨の背側に広がる指背腱膜に停止します (Netter, 2019)。
- 神経支配:橈骨神経深枝(後骨間神経)により支配されています(C7、C8) (Drake et al., 2020)。
- 血液供給:後骨間動脈および尺骨動脈からの分枝により栄養されています (Standring, 2020)。
解剖学的変異
- 腱の分裂パターン:単独の腱で第5指に停止する例は15〜18%と少なく、2腱に分裂する例が最も多く74%を占めます。これは機能的冗長性を提供し、腱損傷のリスクを軽減します (Yoshida et al., 2015)。
- 停止部の変異:第5指と第4指に腱を送る例が10.3%に見られ、これは薬指の伸展にも部分的に関与することを示しています (Celik et al., 2012)。
- 稀に(約1〜2%の症例で)筋の完全欠損が報告されており、この場合は総指伸筋が代償的に機能することが知られています (Yammine, 2014)。
- 二頭筋や付加的筋束などの過剰筋変異も報告されています (von Schroeder and Botte, 2001)。
機能と臨床的意義
- 主機能:小指の中手指節関節(MCP)、近位指節間関節(PIP)、遠位指節間関節(DIP)の伸展を担います (Palastanga and Soames, 2012)。
- 臨床的意義:小指の独立した伸展が可能なため、微細な手の動きや把持機能に貢献しています。特に精密把持時の指の位置調整に重要です (Clarkson, 2013)。
- 第5腱区画狭窄症候群:この区画での腱の炎症や肥厚により、腱の滑走障害や痛みを引き起こすことがあります (Saunders et al., 2016)。
- ド・ケルバン腱鞘炎類似の病態が小指伸筋腱でも生じる可能性があり、保存的治療や手術的治療の対象となります (Graham and Mulley, 2013)。
- スポーツ障害:特に繰り返しの手の使用を要するスポーツ(テニス、ゴルフなど)で過用による腱炎が発生することがあります (Rettig, 2004)。