長母指伸筋

長母指伸筋は、前腕の深層に位置する筋で、以下の特徴があります:

また、長母指伸筋の腱は手の背側で「嗅ぎタバコ入れ(たばこいれ)」と呼ばれる窪みの尺側縁を形成します。この窪みの底では、橈骨動脈が手背に向かって走行しています。

解剖学的には、この筋は前腕の伸筋群の中でも変異が少ないとされています。

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J0180 (右側の橈骨:背側からの図)

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J0180 (右側の橈骨:背側からの図)

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J0184 (右前腕骨:筋の起こる所と着く所:回外位の手の裏側からの図)

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J0206 (右の手骨:および筋の起こる所と着く所を示すの背面からの図)

日本人のからだ(本間敏彦 2000)によると

長母指伸筋は、尺骨の背側面の狭い帯状部から始まり、骨間膜と長母指外転筋、短母指伸筋の起始部に隣接して尺側に向かいます。第3腱区画を通過した腱は、母指の末節骨底に付着します。停止腱は、「嗅ぎタバコ入れ」と呼ばれる窪みの尺側縁を形成します。この窪みの底では、橈骨動脈と伴行静脈が手根の伸筋側に向かいます。窪みの骨性底は大菱形骨と舟状骨で形成され、その橈側境界は短母指伸筋と長母指外転筋の腱で形成されます。これらの筋が収縮すると、皮膚に接している腱が突出し、明確な窪みとなります。長母指伸筋は、尺骨体中部および骨間膜から起始し、母指の指背腱膜になります。この筋は前腕の伸筋群の中でも変異が少ないとされています(Kosugi et al., 1989)。停止腱の分裂により第2指に副腱を持つという報告もあります(小杉ら, 1985 a)。長母指伸筋と示指伸筋は、下等の哺乳類では癒合し、母指以外の第2-第5指に到達します。これらの筋を深層指伸筋と言いますが、この遺残として様々な変異が見られます。これらの変異とその起源についての詳細な報告があります(吉田, 1978; 吉田・福山, 1979; 吉田ら, 1984; Yoshida, 1990, 1995)。