

J0184 (右前腕骨:筋の起こる所と着く所:回外位の手の裏側からの図)

J0206 (右の手骨:および筋の起こる所と着く所を示すの背面からの図)







長母指伸筋は、前腕の背側区画深層に位置する細長い筋で、母指の伸展を担う重要な解剖学的構造です。この筋は前腕伸筋群の深層に属し、母指の運動において不可欠な役割を果たしています(Gray and Lewis, 2020; Standring, 2021)。
長母指伸筋の起始部は尺骨体中部の背側面(中央1/3)と隣接する骨間膜から始まります(Standring, 2021)。筋腹は前腕の中部から遠位部にかけて走行し、腱となって手関節を越えます。停止部は母指末節骨(遠位指節骨)の背側底部に付着します(Moore et al., 2018)。
長母指伸筋腱は、橈骨茎状突起の内側(尺側)を回り込むように走行し、第3伸筋腱区画(骨線維性トンネル)を通過して手関節を横断します(Netter, 2019)。この第3腱区画は、橈骨遠位端の背側面に位置し、伸筋支帯によって形成される骨線維性トンネルで、長母指伸筋腱専用の区画です(Drake et al., 2020)。
前腕では、長母指伸筋は短母指伸筋の内側(尺側)に位置し、示指伸筋の外側(橈側)に隣接しています。手背部では、長母指伸筋腱は解剖学的嗅ぎタバコ入れ(anatomical snuffbox, fovea radialis)と呼ばれる三角形の窪みの尺側境界を形成します(Drake et al., 2020; Tubbs et al., 2019)。
解剖学的嗅ぎタバコ入れは、母指を伸展・外転した際に手背の橈側に現れる三角形の窪みで、以下の構造によって境界が形成されます:
この窪みの底部を橈骨動脈が通過するため、この部位は橈骨動脈の触診点として臨床的に重要です(Tubbs et al., 2019)。また、舟状骨がこの窪みの底部に位置することから、舟状骨骨折の診断においても重要な解剖学的ランドマークとなります。
長母指伸筋は後骨間神経(橈骨神経深枝由来、C7-C8神経根レベル)によって支配されます(Agur and Dalley, 2017)。後骨間神経は、橈骨神経が肘関節の高さで浅枝と深枝に分岐した後の深枝が、回外筋を貫通してフローゼのアーケードを通過した後の名称です。この神経は前腕背側深層の全ての伸筋を支配します(Standring, 2021)。
長母指伸筋への血液供給は、主に後骨間動脈(総骨間動脈の終枝)と骨間膜反回動脈によって行われます(Schuenke et al., 2020)。後骨間動脈は骨間膜を貫通して前腕背側区画に入り、前腕伸筋群の深層筋に栄養を供給します。