腹横筋 Musculus transversus abdominis

腹横筋は、腹壁の最深層に位置する平坦な筋肉で、腹腔内の内臓を保護し安定させる重要な役割を果たしています。この筋肉は、腹壁全体を水平方向に走行し、腹部のコルセットとして機能します(Hodges and Richardson, 1997)。

1. 解剖学的特徴

2. 起始と停止

3. 機能的役割

4. 神経支配と血液供給

5. 解剖学的関連構造

腹横筋の筋線維は腹壁の外側から内側に向かって走行し、半月線(腹直筋外縁に形成される弧状の線)を越えると腱膜に移行します(Netter, 2019)。この腱膜は腹直筋鞘の形成に関与します。弓状線(腹直筋鞘後葉が欠如し始める位置、通常は臍の下方約5cmに位置)より上方では、腹横筋の腱膜は腹直筋の後面を通過し、内腹斜筋の後葉と合流して腹直筋鞘後葉を形成します。弓状線以下では、すべての腹壁筋の腱膜が腹直筋の前面を通過します。

鼠径部では、腹横筋の最下部の筋線維と腱膜が鼠径管の形成に関与し、腹横筋筋膜が内鼠径輪を形成します(Loukas et al., 2018)。また、腹横筋の一部の筋線維は精巣挙筋(男性)または子宮円索(女性)に付着します。

6. 臨床的意義

7. スポーツ医学的側面

腹横筋は「深部横隔膜」とも呼ばれ、骨盤底筋群や横隔膜と協調して体幹の安定性に寄与します(Kibler et al., 2006)。この筋肉のトレーニングはコアスタビリティを向上させ、運動パフォーマンスの向上や腰痛予防に効果的です(McGill, 2010)。ドローイン(腹部を引き込む)エクササイズは腹横筋を特異的に活性化させるトレーニング方法として広く用いられています(Richardson et al., 2004)。

参考文献