踵骨隆起 Tuber calcanei
踵骨隆起は、踵骨(足根骨の中で最大の骨で、距骨の下方に位置する)の後部に突出する顕著な骨性隆起です。かかとの大部分を構成し、直立二足歩行における荷重伝達と衝撃吸収において重要な役割を果たします (Gray and Williams, 2020; Standring, 2023)。

J0254 (右の踵骨:内側からの図)

J0255 (右の踵骨:外側から少し上方からの図)

J0273 (右足の骨:足底からの図)

J0345 (右足の関節:後方からの図)

J0350 (右足の関節で、足底側からの図)

J0512 (右の下腿の筋:後方からの図)

J0513 (右下腿の筋(第二層):後方からの図)

J0514 (右下腿の筋(第3層):後方から図)

J0515 (右下肢の筋(第4層):後方からの図)

J0516 (右足底の筋膜)

J0517 (右足底の筋)

J0518 (右足底の筋(第2層))

J0519 (右足の足底の筋(第3層))

J0526 (右足底の腱鞘は赤い物質で注入された図)

J0968 (右足底の深部神経、下方からの図)
解剖学的構造
1. 形態と構造
- 踵骨隆起は踵骨の後半部が大きな骨塊として後方に突出したもので、かかとの主要部分を形成します (Standring, 2023)。
- 隆起の後面には、横走する鋸歯状の稜線(横稜線)が存在し、上下に分かれています。この稜線は腱の付着部として機能します (Moore et al., 2022)。
- 踵骨隆起の内側面と外側面は、それぞれ内側結節と外側結節を形成し、これらは足底筋膜や足底筋群の起始部となります (Hess, 2010)。
2. 筋腱の付着部位
- 上部:**アキレス腱(腓腹筋とヒラメ筋の共同腱)**が付着します。アキレス腱は人体で最も強力な腱の一つであり、下腿三頭筋の収縮力を踵骨に伝達し、足関節の底屈(つま先立ち)と歩行・走行時の推進力を生み出します (Doral et al., 2018)。
- 下部:**足底腱膜(足底筋膜)**が踵骨隆起の内側結節から起始し、足のアーチを支持します。また、短趾屈筋、外転小趾筋、外転母趾筋などの足底の短屈筋群も付着します (Moore et al., 2022)。
3. 血管支配
- 踵骨隆起およびその周囲組織は、主に後脛骨動脈と腓骨動脈からの踵骨枝によって栄養されます (Attinger et al., 2006)。
- 特に踵骨の後方は血流が比較的乏しい領域であり、骨折や腱断裂後の治癒過程が遅延しやすい傾向があります (Attinger et al., 2006)。
4. 神経支配
- 踵骨隆起周囲の感覚は、脛骨神経の枝である内側踵骨枝と外側踵骨枝が支配しています (Kim et al., 2015)。
- これらの神経は踵部の皮膚感覚を担い、踵部痛の発生機序において重要な役割を果たします (Kim et al., 2015)。
5. 生体力学的機能
- 踵骨隆起は直立歩行時の最初の接地点として機能し、体重の約60-80%の荷重を受けます (Hess, 2010)。
- アキレス腱を介して下腿三頭筋の力を効率的に伝達し、歩行・走行時の推進力を生み出します (Doral et al., 2018)。