下伸筋支帯[足の]Retinaculum musculorum extensorum inferius pedis
足の下伸筋支帯は、足関節の前面を横切る繊維性の帯状構造であり、解剖学的および機能的に重要な構造です(Gray and Williams, 1989):

J0509 (右下腿の筋:腓側からの図)

J0510 (右下腿の筋、前面からの図)

J0511 (右下腿の筋(第2層):前方からの図)

J0520 (右足背の表層筋)

J0521 (右足背の第二層の筋)

J0524 (右足の筋:脛側からの図)

J0525 (右足の腱鞘は、脛骨側から赤い物質で注入された図)

J0527 (右足背の腱鞘)

J0528 (右足の腱鞘)

J0969 (右下腿の深部神経、前外側からの図)
解剖学的特徴:
- 足背筋膜の近位部が肥厚して形成された繊維性の帯状構造です(Standring, 2020)。
- 踵骨外側面の前上部(距骨洞外側)から始まり、内果と内側楔状骨に向かってY字形を描きます(Moore et al., 2018)。
- 下腿十字靱帯(ligamentum cruciforme cruris)とも呼ばれ、上伸筋支帯の遠位部に位置します(Netter, 2019)。
- 厚さ約1-2mmの薄い繊維性結合組織で構成されています(Sarrafian, 1993)。
構造的特徴:
- 外側脚(lateral limb):最も強固で、踵骨外側面から内側に向かい、第3脛骨筋(tertius)、長趾伸筋、短趾伸筋の腱を包み込み固定します。この部分は特にワナ靱帯(frondiform ligament)とも呼ばれます(Palastanga et al., 2006)。
- 上内側脚(superior medial limb):比較的弱く、外側脚から分岐して内果に向かい、長母趾伸筋と前脛骨筋の腱を覆って固定します(Drake et al., 2015)。
- 下内側脚(inferior medial limb):最も薄弱で、外側脚から分岐して内側楔状骨と舟状骨に付着し、主に長母趾伸筋腱を覆います(Attarian et al., 2005)。
臨床的意義:
- 腱固定機能:足関節の背屈時に伸筋腱の弓状隆起(bowstringing)を防止し、腱の走行を適切に維持します(Leardini et al., 2007)。
- 腱滑膜炎:伸筋支帯下の狭いスペースでの腱の摩擦により、伸筋腱滑膜炎(extensor tenosynovitis)が発生することがあります。特に過度の使用や外傷後に多く見られます(Boruta et al., 1990)。
- 足関節捻挫:重度の足関節外反捻挫では、下伸筋支帯が損傷することがあり、伸筋腱の不安定性を引き起こす可能性があります(Ferran and Maffulli, 2006)。
- 足根管症候群:下伸筋支帯の肥厚や炎症により、その下を通過する深腓骨神経が圧迫され、足背部の感覚障害や筋力低下を引き起こすことがあります(Dellon, 2002)。
- 手術的アプローチ:足関節前方アプローチにおいて、下伸筋支帯は切開され、足関節へのアクセスが得られます。術後の癒着防止のため、適切な修復が必要です(Myerson, 2000)。
この構造は、足関節の機能的安定性において重要な役割を果たし、伸筋群の腱を適切な位置に保持することで、足の円滑な背屈運動を可能にします。また、その下を通過する血管や神経(前脛骨動脈、深腓骨神経)の保護機能も担っています(Katcherian, 1994)。
参考文献: