梨状筋 Musculus piriformis
梨状筋は、骨盤の後方に位置する臨床的に重要な筋肉です。骨盤出口の主要な構成要素であり、その解剖学的位置から神経血管構造との関係が注目されています(Windisch et al., 2007)。
1. 基本情報
1.1 起始と停止
- 起始:仙骨前面の第2〜4仙椎レベル(前仙骨孔の外側)、仙結節靱帯、仙腸関節の関節包、大坐骨切痕上縁(Standring, 2020)
- 停止:大腿骨大転子の上内側面(内側面の上部)
1.2 走行と形態
- 走行:骨盤腔内から大坐骨孔を通過して骨盤外へ出て、臀部深層を外側下方に走行
- 形状:扁平な三角形状で、起始部で幅広く(約2.5cm)、停止部に向かって細くなり強靭な腱となる(約1.2cm幅)(Jankovic et al., 2013)
- 厚さ:中央部で約1cm程度の厚みがある
1.3 周囲関係
- 前方:仙骨神経叢、内腸骨血管
- 後方:大殿筋
- 上方:中殿筋
- 下方:双子筋、内閉鎖筋
1.4 神経支配
- 梨状筋枝(S1,S2の前枝由来、第1、2仙骨神経から直接分岐)(Moore et al., 2018)
2. 機能
- 主作用:股関節外旋(特に股関節屈曲位での外旋作用が強い)
- 副作用:股関節外転、伸展(立位での骨盤安定化に寄与)(Neumann, 2017)