足の関節 Articulationes pedis

J0345 (右足の関節:後方からの図)

J0346 (右足の関節:側面からの図)

J0347 (右足の関節:内側からの図)

J0348 (右足の関節:足の上部からの図)

J0349 (右足の関節:足の背面からの図)

J0350 (右足の関節で、足底側からの図)

J0351 (右足の関節:足底側からの図)

J0352 (右足の関節:足底からの図)

J0353 (右足の関節:足の関節、足の背面)
定義と分類
足の関節は、広義と狭義の二つの定義があります:
- 広義:足根骨、中足骨、および足の指骨の間にあるすべての関節を指します。これには距腿関節、足根間関節、足根中足関節、中足趾節関節、趾節間関節が含まれます。
- 狭義:距腿関節(足関節)のみを指します。臨床的には「足関節」という場合、通常この距腿関節を意味します。
主要な関節の解剖学的構造と臨床的意義
1. 距腿関節(足関節)Articulatio talocruralis
- 構造:脛骨と腓骨の遠位端が形成する関節窩(足関節窩)と、距骨の滑車(距骨滑車)との間の蝶番関節です(Sarrafian & Kelikian, 2011)。脛骨内果と腓骨外果が距骨を挟み込む形で安定性を提供します。関節包は前方で比較的緩く、後方では緊密です。
- 運動:主に矢状面での背屈(伸展)と底屈(屈曲)を行います。背屈は約20度、底屈は約50度可能です(日本整形外科学会・日本関節鏡・膝・スポーツ整形外科学会, 2019)。底屈位では距骨滑車の狭い後部が関節窩に入るため、わずかな側方動揺性が生じます。
- 靭帯:内側は三角靭帯(デルタ靭帯)で、浅層(脛舟部・脛踵部・脛舟部)と深層(前脛距部・後脛距部)から構成され、非常に強固です。外側は前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯からなる外側側副靭帯複合体が関節を補強します(Sarrafian & Kelikian, 2011)。前距腓靭帯は底屈位で緊張し、踵腓靭帯は中間位で緊張します。
- 臨床的意義:足関節捻挫は最も頻度の高いスポーツ外傷の一つで、全スポーツ外傷の約15-20%を占めます(Waterman et al., 2010)。約85%が底屈・内反強制による外側靭帯損傷です。前距腓靭帯が最も損傷されやすく(全外側靭帯損傷の約65%)、次いで踵腓靭帯の合併損傷が多くなります。重症度分類はGrade I(靭帯の伸長)、Grade II(部分断裂)、Grade III(完全断裂)に分けられます。診断には前方引き出しテスト(前距腓靭帯)や内反ストレステスト(踵腓靭帯)が有用です。ストレスX線撮影で前方引き出し距離が健側と比較して3mm以上、距骨傾斜角が5度以上の差があれば不安定性を示唆します。治療は多くの場合保存的ですが、Grade IIIでスポーツ復帰を目指す場合や慢性不安定性を呈する場合には靭帯再建術(Broström法、Broström-Gould変法など)が検討されます(Broström, 1966)。
- 骨折:外果骨折、内果骨折、後果骨折(脛骨後縁骨折)が重要です。Weber分類(腓骨骨折の高さによる分類:Type A-脛腓靭帯結合より遠位、Type B-靭帯結合レベル、Type C-靭帯結合より近位)(Weber, 1972)やLauge-Hansen分類(受傷機転による分類)(Lauge-Hansen, 1950)が用いられます。三果骨折は不安定で手術適応となることが多く、後果骨折が関節面の25%以上を占める場合や2mm以上の転位がある場合は観血的整復固定術の適応となります。骨折後の合併症として、距骨の無腐性壊死、変形性足関節症、慢性疼痛、可動域制限が問題となります。
- 変形性足関節症:一次性(原因不明)は比較的稀で、多くは二次性(外傷後、関節リウマチ、血友病性関節症など)です(Saltzman et al., 2005)。進行例では保存治療(装具療法、薬物療法、理学療法)に抵抗性の場合、関節固定術や人工足関節置換術が検討されます。人工足関節の適応は慎重に判断され、高活動性患者や重度変形例では関節固定術が選択されることが多いです。
2. 距骨下関節 Articulatio subtalaris
- 構造:距骨と踵骨の間にある関節で、解剖学的には後距踵関節と前距踵関節(距踵舟関節の一部)に分かれますが、機能的には一つの単位として働きます(Sarrafian & Kelikian, 2011)。後距踵関節は独立した関節包を持ち、前距踵関節は距踵舟関節と連続します。足根洞(sinus tarsi)には骨間距踵靭帯があり、距骨下関節の安定性に重要です。
- 運動軸:距骨下関節の回転軸は踵骨後端内側から前方外側上方に向かい、矢状面に対して約42度、横断面に対して約16度の角度を持ちます(個人差あり)(Inman, 1976)。この軸を中心に回内・回外運動が行われます。
- 運動:主に回内(外反・外転・背屈の複合運動)と回外(内反・内転・底屈の複合運動)を行います。正常な回内・回外の可動域は合わせて約20-30度です。歩行時の踵接地期から立脚中期にかけて回内運動が生じ、地面への適応と衝撃吸収を行います。立脚後期から蹴り出し期にかけては回外運動により足部を硬くし、効率的な推進力を生み出します(Perry & Burnfield, 2010)。
- 臨床的意義:高所からの転落などで踵骨骨折が生じると、距骨下関節の不整や関節症が発生し、長期的な疼痛や可動域制限の原因となります。踵骨骨折はSanders分類(CTによる後距踵関節面の骨折線の数と位置による分類)が予後予測に有用で(Sanders, 1992)、Type III-IVでは距骨下関節症の発生率が高くなります。Böhler角(正常30-40度)やGissane角(正常120-145度)の減少は踵骨の圧潰を示し、関節面の不整が2mm以上ある場合は観血的整復固定術の適応となります。
- 距骨下関節の病態:扁平足(過回内)や凹足(過回外)などの足部変形に関与します。過回内は後脛骨筋腱機能不全、足底筋膜炎、内側脛骨ストレス症候群などと関連します(Kulig et al., 2009)。足根洞症候群は距腿関節捻挫後に生じることがあり、足根洞部の疼痛と距骨下関節の不安定感を特徴とします。診断には足根洞への局所麻酔薬注入による疼痛の消失が有用です。慢性化した距骨下関節の不安定性や変形性関節症に対しては、距骨下関節固定術が行われます。