外側側副靭帯(Fibular Collateral Ligament; FCL)は、膝関節の外側安定性を担保する最も重要な静的制動装置です。この靭帯は膝関節の後外側複合体(Posterolateral Corner; PLC)の主要構成要素として機能し、膝関節の複雑な安定性機構において中心的役割を果たしています。











外側側副靭帯は大腿骨外側上顆の後下部から起始します。起始部は大腿骨の解剖学的軸に対して約30度後方に位置しており、この位置関係が膝関節の屈曲伸展運動における靭帯の張力変化に重要な意味を持ちます (LaPrade et al., 2012)。起始部の面積は約25-35mm²で、線維束の直径は約4-5mmの円柱状を呈します。組織学的には密性結合組織からなり、コラーゲン線維が規則正しく配列した強靭な構造を示します。
靭帯は起始部から遠位外側方向へ走行し、関節裂隙を垂直に近い角度で横切ります (Seebacher et al., 1982)。走行距離は約5-6cmで、途中で若干の扁平化を示しますが、全体としては円柱状の形態を維持します。膝関節屈曲位では前方へ、伸展位では後方への相対的移動を示し、この動的変化が膝関節の運動制御に寄与しています。
腓骨頭の前外側部に停止します。停止部は腓骨頭の外側面の前方約1/3の位置に相当し、面積は約30-40mm²です (Espregueira-Mendes and da Silva, 2006)。停止部では線維束が扇状に広がり、骨膜との強固な結合を形成します。この部位は腓骨神経が腓骨頭を回り込む位置と近接しているため、臨床的に重要な解剖学的関係を示します。
外側側副靭帯の重要な特徴は、その下部が関節包から完全に分離している点です (Terry and LaPrade, 1996)。この靭帯と関節包の間の間隙を膝窩筋腱(popliteus tendon)が通過し、さらに大腿二頭筋腱も近接して走行します。この解剖学的配置により、靭帯と関節包の間には滑液嚢が形成されることがあり、これが膝関節運動時の摩擦軽減に寄与しています。
周囲構造物との関係では、前方は腸脛靭帯(iliotibial band)と線維性の連結を持ち、後方は膝窩筋腱および膝窩腓骨靭帯(popliteofibular ligament)と協調して後外側安定性を提供します。下方では総腓骨神経が腓骨頭の直後を走行し、靭帯損傷時に神経損傷のリスクが高まる解剖学的基盤となっています (Seebacher et al., 1982)。大腿二頭筋腱との癒合も個体差がありますが、約30-40%の症例で認められ、これが外側安定性の増強に寄与しています。
外側側副靭帯への血液供給は、主に外側上膝動脈(lateral superior genicular artery)および外側下膝動脈(lateral inferior genicular artery)の分枝から行われます。靭帯実質内には血管網が形成されており、損傷後の治癒過程において重要な役割を果たします。神経支配は主に大腿神経および総腓骨神経の関節枝から受けており、固有受容感覚の伝達に関与しています。
外側側副靭帯は膝関節の内反ストレス(外反力、つまり内側への力)に対する一次的制動装置として機能します (Grood et al., 1981)。生体力学的研究により、膝関節伸展位において靭帯の張力が最大となり、内反ストレスに対する抵抗力が最も強くなることが示されています。完全伸展位では内反制動力の約70%を外側側副靭帯が担い、残りを関節包や筋腱などの二次的制動装置が分担しています。
膝関節屈曲角度の増加に伴い、外側側副靭帯の緊張度は減少しますが、30度屈曲位までは依然として重要な制動機能を維持します。これは日常生活動作やスポーツ動作において、様々な膝関節角度で外側安定性が保たれる機構的基盤となっています。