椎体 Corpus vertebrae
椎体は、椎骨の前部を占める短い円柱状の構造であり、脊柱の主要な荷重支持部分です(Gray et al., 2020)。解剖学的および臨床的に重要な特徴は以下の通りです:
解剖学的特徴
- 上下端は平坦な終板(vertebral end plate)を形成し、椎間円板と接合します(Standring, 2021)。
- 側面から見ると、中央部がわずかにくびれており(waisting)、これにより側方からの力に対する抵抗力が増しています(Bogduk, 2012)。
- 後面は椎孔(vertebral foramen)の前壁を構成し、縦に走る浅く広い溝には後縦靱帯が付着します(Moore et al., 2018)。
- 椎体の内部は海綿骨で構成され、赤色骨髄を含む豊富な血管網を有しています(Panjabi and White, 2000)。
- 上下面は、椎間円板と結合する硝子軟骨(hyaline cartilage)で覆われており、これが衝撃を吸収する重要な役割を果たします(Roberts et al., 2006)。
- 軟骨の周縁部は骨化し、後方部分が欠けた不完全な輪状の骨端板(epiphyseal ring)を形成します(Adams et al., 2013)。
- 椎体の外側は緻密骨(compact bone)で覆われており、強度を提供しています(Bogduk, 2012)。
発達と加齢変化
- 加齢とともに骨端板の骨化が進行し、椎体の上下面の縁が側面から水平に突出(osteophyte形成)するようになります(Urban and Roberts, 2003)。
- 高齢者では椎体の海綿骨の骨梁が減少し、骨密度の低下(骨粗鬆症)を生じやすくなります(Genant et al., 2006)。
臨床的意義
- 椎体骨折は、骨粗鬆症患者や外傷患者によく見られ、圧迫骨折として現れることが多く、椎体の高さが減少します(Melton et al., 2019)。
- 椎体は脊椎腫瘍の好発部位であり、原発性腫瘍や転移性腫瘍が発生することがあります(Sciubba et al., 2010)。
- 椎体の変性疾患には、シュモール結節や変形性脊椎症などがあります(Modic and Ross, 2007)。
- 椎体形成術や気球椎体形成術などの最小侵襲手術は、椎体骨折の治療に用いられます(Garfin et al., 2015)。
椎体は脊柱の主要な支持構造であり、椎骨間の荷重を効果的に分散させる重要な役割を果たしています(Iatridis et al., 2013)。また、脊髄や神経根を保護する椎孔の前壁を形成することで神経組織の保護にも寄与しています(Standring, 2021)。
参考文献