椎体 Corpus vertebrae
椎体は、椎骨の前部を占める短い円柱状の構造であり、脊柱の主要な荷重支持部分です(Gray et al., 2020)。解剖学的および臨床的に重要な特徴は以下の通りです:

J0116 (椎骨:頭蓋骨側からの図)
J0117 (椎骨:右方からの図)

J0118 (第4頚椎:頭側からの図)
J0119 (第4頚椎:右側からの図)

J0288 (椎間円板と隣接する椎体:前方からの図)

J0290 (腰椎の一部の正中断、右切断半分:左方からの図)

J0292 (胸椎と肋骨、椎間円板:前方からの図)

J0293 (腰椎体と靭帯:後方からの図)

J0296 (後頭骨と第1から第3の頚椎は、前方から見ると靱帯と結合する)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)

J0303 (右側の第10および第11肋骨と、関連する椎骨と靭帯)

J0306 (肋骨と関連する椎骨と靱帯:上方からの図)

J0325 (右の骨盤の靱帯:前面から少し上からの図)

J0616 (腰椎の静脈の正中断面:左側からの図)

J0617 (腰椎の静脈:上方からの水平断面図)

J0828 (脊椎と筋の断面図)
解剖学的特徴
- 上下端は平坦な終板(vertebral end plate)を形成し、椎間円板と接合します(Standring, 2021)。
- 側面から見ると、中央部がわずかにくびれており(waisting)、これにより側方からの力に対する抵抗力が増しています(Bogduk, 2012)。
- 後面は椎孔(vertebral foramen)の前壁を構成し、縦に走る浅く広い溝には後縦靱帯が付着します(Moore et al., 2018)。
- 椎体の内部は海綿骨で構成され、赤色骨髄を含む豊富な血管網を有しています(Panjabi and White, 2000)。
- 上下面は、椎間円板と結合する硝子軟骨(hyaline cartilage)で覆われており、これが衝撃を吸収する重要な役割を果たします(Roberts et al., 2006)。
- 軟骨の周縁部は骨化し、後方部分が欠けた不完全な輪状の骨端板(epiphyseal ring)を形成します(Adams et al., 2013)。
- 椎体の外側は緻密骨(compact bone)で覆われており、強度を提供しています(Bogduk, 2012)。
発達と加齢変化
- 加齢とともに骨端板の骨化が進行し、椎体の上下面の縁が側面から水平に突出(osteophyte形成)するようになります(Urban and Roberts, 2003)。
- 高齢者では椎体の海綿骨の骨梁が減少し、骨密度の低下(骨粗鬆症)を生じやすくなります(Genant et al., 2006)。
臨床的意義
1. 椎体骨折
椎体骨折は、骨粗鬆症患者や外傷患者において最も頻繁に見られる脊椎病変の一つです(Melton et al., 2019)。
- 圧迫骨折(Compression fracture): 最も一般的な椎体骨折のタイプで、椎体の高さが減少します。主に胸腰椎移行部(T12-L1)に好発し、骨粗鬆症患者では軽微な外力でも発生します(Old and Calvert, 2004)。臨床的には急性の背部痛として現れ、前屈時に増悪することが特徴的です。
- 破裂骨折(Burst fracture): 高エネルギー外傷により椎体が粉砕され、骨片が脊柱管内に突出する可能性があります。神経学的障害のリスクが高く、緊急の画像診断と神経学的評価が必要です(Denis, 1983)。CTスキャンにより骨片の位置と脊柱管狭窄の程度を評価します。
- 病的骨折(Pathological fracture): 腫瘍転移や感染症により椎体の強度が低下し、正常な負荷でも骨折が生じます。転移性脊椎腫瘍の約70%は椎体に発生し、乳癌、前立腺癌、肺癌からの転移が多いです(Sciubba et al., 2010)。