栄養孔 Foramen nutricium
栄養孔は、骨に栄養を供給する血管が通過する開口部であり、骨の発育・維持・修復に不可欠な構造です(Trueta & Morgan, 1960; Brookes & Revell, 1998)。

J0005 (大人の右側の脛骨の近位半分の背面および側面からの図)

J0166 (右の鎖骨、下方からの図)

J0169 (右上腕骨:前方からの図)

J0170 (右上腕骨:後方からの図)

J0177 (右の尺骨:前方からの図)

J0180 (右側の橈骨:背側からの図)

J0202 (右の第三指の中手骨と指節:手の背面からの図)

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0236 (右大腿骨、近位端、第三転子(破格):後方からの図)

J0245 (右の脛骨と腓骨:後方からの図)
解剖学的特徴
形態と構造
- 直径1〜2mmの円形または楕円形の開口部で、骨の表面(骨膜側)から骨質を斜めに貫通し、髄腔に達します(Hughes, 1952)
- 栄養孔から骨内部へと続く管状の通路を**栄養管(nutrient canal)**と呼びます(Rhinelander, 1974)
- 栄養管は骨幹部では通常、骨の成長方向とは反対方向(関節から遠ざかる方向)に斜めに走行します(Hughes, 1952; Sendemir & Cimen, 1991)
- 管内には栄養動脈(nutrient artery)、栄養静脈(nutrient vein)、および神経線維が通過します(Brookes & Revell, 1998)
分布と個体差
- 長骨では通常、骨幹部の中央付近に1〜2個の主要な栄養孔が存在します(例:大腿骨、脛骨、上腕骨)(Kizilkanat et al., 2007)
- 短骨や扁平骨では、複数の小さな栄養孔が不規則に分布します(Standring, 2016)
- 椎骨では椎体の前面と後面に多数の栄養孔が見られ、その数や配置には顕著な個体差があります(Ratcliffe, 1980)
- 頭蓋骨では内板と外板の両面に多数の小孔が分布し、硬膜動脈や導出静脈が通過します(Standring, 2016)
血管解剖
栄養動脈系
- 栄養動脈は周囲の主要動脈から分岐し(例:大腿動脈から大腿骨栄養動脈が分岐)、骨膜を貫通して栄養孔に入ります(Trueta & Morgan, 1960)
- 髄腔内で上行枝と下行枝に分かれ、骨髄および骨内膜を栄養します(Rhinelander, 1974)
- 栄養動脈は骨の血液供給の約50〜70%を担い、特に骨幹部の内側3分の2の血流を維持します(Trueta & Morgan, 1960; Brookes, 1971)
- 骨端部では骨端動脈が別途分布し、成長期には骨端軟骨によって栄養動脈系とは分離されています(Trueta, 1963)