自由ヒモ Taenia libera

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J0702 (回盲部:虫垂は伸ばされ、前部の位置で部分的に開いた図)

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J0704 (腹膜被覆を除去した後の直腸:前方からの図)

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J0719 (腸間膜の屈曲:前方から見た図)

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J0720 (大腸と腸間膜の根:前方からの図)

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J0724 (十二指腸空腸陥凹、前方からの図)

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J0725 (盲腸の腹膜窩:前方からの図)

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J0726 (S状結腸間陥凹:前下方からの図)

定義と位置

自由ヒモ(taenia libera)は大腸の3本の縦走筋帯(taeniae coli)の一つで、間膜ヒモ(taenia mesocolica)と大網ヒモ(taenia omentalis)の間に位置しています(Standring, 2020)。大腸の前面に沿って走行し、腹腔内に自由に露出しているため「自由ヒモ」と呼ばれます(Moore et al., 2018)。この縦走筋帯は結腸壁の外層を構成し、結腸の運動機能と形態維持に重要な役割を果たしています(Drake et al., 2020)。

解剖学的特徴

自由ヒモは盲腸から始まり、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を経て直腸上部まで連続しています(Moore et al., 2018)。幅は約8mmで、大腸壁の縦走筋層が集束して肥厚することにより形成されています(Standring, 2020)。この縦走筋帯の存在により、大腸壁は袋状に膨らんで結腸膨起(haustra coli)を形成し、特徴的な外観を呈します(Netter, 2018)。

縦走筋帯の間の結腸壁では、輪状筋が優位となり、縦走筋層は薄くなっています(Coffey et al., 2016)。自由ヒモは腸管壁の緊張度を調整し、結腸の蠕動運動を制御する機能を有しています(Guyton and Hall, 2016)。また、自由ヒモに沿って脂肪垂(appendices epiploicae)が付着しており、これは結腸を識別する重要な解剖学的指標となります(Sinnatamby, 2011)。

臨床的意義

外科手術において、自由ヒモは大腸の識別や手術操作の際の重要な解剖学的指標となります(Heald et al., 2019)。特に腹腔鏡下大腸切除術では、自由ヒモの認識が正確な大腸の位置同定と切除範囲の決定に役立ちます(Sugarbaker, 2021)。結腸授動術の際には、自由ヒモを目印として剥離層を確認することができます(Hohenberger et al., 2009)。

大腸憩室症の発生機序において、自由ヒモは重要な役割を果たしています。ヒモとヒモの間の筋層が薄い部分では、内圧上昇により粘膜が筋層を貫通して憩室を形成することがあります(Stollman and Raskin, 2004)。特に自由ヒモと間膜ヒモの間の腸管壁は、血管が貫通する部位であり、憩室の好発部位となります(Painter and Burkitt, 1971)。

虚血性大腸炎などの血管性疾患では、自由ヒモに沿った病変分布が特徴的なことがあります(Theodoropoulou and Koutroubakis, 2019)。これは結腸の血管分布と関連しており、分水嶺領域である脾弯曲部や直腸S状部結合部では虚血が生じやすくなります(Brandt and Boley, 2000)。また、大腸癌の手術では、自由ヒモの位置を基準として腫瘍の局在を正確に記述することが重要です(Japanese Society for Cancer of the Colon and Rectum, 2019)。

参考文献