仙結節靱帯 Ligamentum sacrotuberale

J0325 (右の骨盤の靱帯:前面から少し上からの図)

J0326 (右側の骨盤の靱帯:後方からの図)

J0455 (長い背筋(1層目):背面図)

J0492 (右側の骨盤の筋:内側からの図)

J0493 (右骨盤の筋:外側から遠位の図)

J0504 (右側の臀部の筋(第2層):背面図)

J0505 (右大腿の筋:背面図)

J0506 (右大腿の筋:背面図)

J0596 (男性会陰の動脈)

J0801 (男性の肛門挙筋:上面からの図)

J0962 (右の臀部の深部神経:後方からの図)
J0972 (男性の会陰の神経:下方からの図)

J0973 (女性の会陰の神経:下方からの図)
仙結節靱帯は、骨盤の後部に位置する強靭な線維性結合組織で、骨盤の安定性に重要な役割を果たしています(Vleeming et al., 2012)。以下に解剖学的特徴と臨床的意義を詳述します:
解剖学的特徴
- 形態:強力な三角形または扇形の靱帯構造を持ち、厚さ約2-3mmの強固な線維束から構成されています(Standring, 2021)。
- 起始:坐骨結節(tuber ischiadicum)の後内側面から起始し、内側上方に向かって扇状に広がります。
- 停止:下後腸骨棘(spina iliaca posterior inferior)、仙骨(sacrum)下半部の外側縁、および尾骨(coccyx)に付着します(Moore et al., 2018)。
- 構造:主に第3〜第5仙骨分節と尾骨に強く付着する線維束と、仙腸関節周囲の後仙腸靱帯と連続する線維束から構成されています(Bogduk, 2005)。
- 近接構造:
- 内側で仙棘靱帯(ligamentum sacrospinale)と隣接し、共同して坐骨孔を形成します(Drake et al., 2019)。
- 大臀筋(musculus gluteus maximus)の一部が後面に付着します。
- 長頭二頭筋(caput longum musculi bicipitis femoris)の起始部が関連しています(Netter, 2018)。
機能的意義
- 骨盤の安定化:仙骨の前傾(nutational)運動を制限し、骨盤の後部安定性を維持します(Vleeming and Schuenke, 2019)。
- 開口部の形成:仙棘靱帯と共に、大坐骨切痕(incisura ischiadica major)を大坐骨孔(foramen ischiadicum majus)に、小坐骨切痕(incisura ischiadica minor)を小坐骨孔(foramen ischiadicum minus)に変換します(Williams and Warwick, 2014)。
- 神経血管路の提供:靱帯の深層と仙棘靱帯の間には重要な神経血管束が通過します(Mahadevan, 2018):
- 陰部神経(nervus pudendus)
- 内陰部動静脈(vasa pudenda interna)
- 下臀皮神経(nervus cutaneus femoris posterior)の枝が靱帯自体を貫通することがあります。
臨床的意義
1. 仙腸関節機能障害と腰痛
仙結節靱帯の機能不全は、仙腸関節由来の疼痛症候群の主要な原因の一つです(Laslett, 2008)。靱帯の過緊張、部分断裂、または弛緩は、骨盤の力学的安定性を損ない、仙腸関節の異常な可動性を引き起こします(Vleeming et al., 2012)。
- 病態生理:靱帯損傷により仙骨のnutationとcounternutationの制御が失われ、仙腸関節の微小な不安定性が生じます(Vleeming and Schuenke, 2019)。これにより関節包の侵害受容器が刺激され、腰仙部、臀部、鼠径部への関連痛が発生します。
- 臨床症状:片側性または両側性の腰仙部痛、長時間の座位や立位での疼痛増強、階段昇降時の痛み、仰臥位からの起き上がり困難などが特徴的です(Forst et al., 2006)。
- 診断:Patrick test(FABER test)、Gaenslen test、thigh thrust testなどの仙腸関節誘発テストが陽性となります(Szadek et al., 2009)。画像診断ではMRIで靱帯の肥厚、信号変化、周囲の浮腫が認められることがあります。
- 治療:保存的治療として、理学療法による骨盤安定化エクササイズ、仙腸関節マニピュレーション、超音波ガイド下での靱帯周囲への局所麻酔薬・ステロイド注射が有効です(Chou et al., 2013)。難治例では仙腸関節固定術が検討されます。