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片山正輝

目次(V. 神経系)

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図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図))

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図468(中脳横断面における皮質延髄路と皮質脊髄路の位置)

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図506(錐体路:側方より見る)

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図507(錐体路、三叉神経および顔面神経の運動性部分の中枢伝導路:前方からの図)

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図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根)

錐体路はヒトでは中心前回の領域と上前頭回および中前頭回(?)の後部において巨大錐体細胞から始まる。その神経突起は放線冠の一部をなして下行し、内包の後脚の内側1/3に達する。次いで錐体路の線維は大脳脚に入り、横断面で大脳脚を5つに分けたうちの第2~第4の部分を占める(図468(中脳横断面における皮質延髄路と皮質脊髄路の位置))。さらに進んで橋縦束となって橋の腹方部を貫くが、そこでは横走する橋線維によっていくつかの束に分割される。延髄では錐体を形成し、その大部分の線維は錐体交叉をなして対側に達する(図507(錐体路、三叉神経および顔面神経の運動性部分の中枢伝導路:前方からの図))。

錐体路の大部分はここで交叉し、側索の背方部に至り、**外側皮質脊髄路(錐体側索路)Tractus corticospinalis lateralis (Pyramidenseitenstrangbahn)を形成する。錐体交叉で交叉しない少部分の錐体路線維は前索の内側部を前皮質脊髄路(錐体前索路)**Tractus corticospinalis ventralis (Pyramidenvorderstrangbahn)となって下方に走り、その線維は最終的に脊髄の白前交連を通って対側に達する(図405(脊髄における種々の伝導路の領域を示す(模型図)))。

前索と側索を下行する両錐体路の終末線維は前柱の神経細胞に達する。

錐体路はその経過中に多数の側枝を出す(図506(錐体路:側方より見る))。比較的太い側枝からなる線維束が橋核と黒核に与えられる。脊髄内でも錐体路から多くの側枝が出て、前柱細胞に達する。前柱の細胞から出る神経突起は前根線維となって脊髄を出て、末梢神経内を走り、体幹および四肢の筋に至る。

1.中前頭回後部から出る錐体路の一部は横隔神経Nervus phrenicusの系統となる。この線維群は放線冠内を下行し、内包前脚の膝付近を通過後、大脳脚を貫き、部分的に交叉して延髄に達する。

この系統のさらなる経路は不明だが、刺激時に現れる吸気効果により生理学的に追跡可能である。

おそらくこの線維は延髄内の呼吸中枢"Respirationskern"(灰白網様体全体と推測される)に達し、頚髄に下行する。ここでは側索の腹側部、前柱近くにあり、最終的に部分交叉後、第4(および第5)頚髄の横隔神経核に入る。この核に相当する前柱細胞の軸索が脊髄神経の前根を通り、横隔神経となって横隔膜に達する。

錐体路線維の他の一部は上前頭回後部から出て(図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根) c)、他の錐体路線維束とともに下行する。一部は交叉し、一部は交叉せずに延髄下部の疑核下部に達し、また頚髄内を走って前柱(第5、第6、第7頚髄まで)の背外側にある特殊な細胞群に達する。この前柱細胞が副神経核Nucleus originis n. accessoriiである。大脳皮質からこの核に達する線維は副神経系Accessoriussystemと呼べる。その続きは副神経の根であり、この核から発して背側に走り、側索を通過後、一時垂直に上行してから側方に向きを変え、最終的に副神経に入り、僧帽筋と胸鎖乳突筋を支配する。

中心前回下部の領域で顔面神経系Facialis-System(図507(錐体路、三叉神経および顔面神経の運動性部分の中枢伝導路:前方からの図)図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根))が始まる。これは放線冠内を下行し、内包後脚の膝付近を通り、大脳脚では錐体路の直近を走る。顔面神経系の線維は錐体路に伴って橋底部内を走り、その大部分が橋下部で交叉し、最終的に顔面神経核に達する。注目すべきは、前頭部と眼瞼の筋を支配するこの核の部分が、交叉性線維に加えて同側性線維も受けることである。顔面神経核の細胞から生じる神経突起は背内側に走り、外転神経核上方で顔面神経の内膝を形成し、顔面神経根となって外に出る(図463(橋の横断面I)図464(橋の横断面II)図492(三叉神経脊髄路の横断図)、493(顔面神経根の経路模式図) )。

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図507(錐体路、三叉神経および顔面神経の運動性部分の中枢伝導路:前方からの図)

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図463(橋の横断面I)

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図464(橋の横断面II)

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図492(三叉神経脊髄路の横断図)、493(顔面神経根の経路模式図)

顔面神経系より下方、中心前回下部の細胞からは下行性の三叉神経系Trigeminus-System(図507(錐体路、三叉神経および顔面神経の運動性部分の中枢伝導路:前方からの図)図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根))が起こる。これは顔面神経系と同様に放線冠を形成して進み、内包・大脳脚・橋を通る。下丘下部の高さで三叉神経系の線維は錐体路から徐々に背側に離れ、縫線で部分的に交叉して三叉神経起始核に達する。この核の細胞から出る神経突起が三叉神経の運動性根となる。

下行性三叉神経系には、いわゆる三叉神経副核accessorischer Trigeminuskernに達する線維束もある。この副核は四丘体領域と橋上部で中心灰白質の外縁に存在する円みを帯びた神経細胞集団で、青斑の細胞と直接連続している。この線維系統の中枢経路は確定的には証明されていないが、おそらく次のようになっているだろう。すなわち、これに属する線維は大脳皮質から出て放線冠内を下行し、内包を通過後に被蓋に達し、中心灰白質のすぐ外側に特殊な線維束を形成する。この束は横断面では三日月形を呈し、上述の核まで続いている。この線維系の末梢ニューロンは三叉神経中脳路により形成されるが、別説ではこの中脳路は三叉神経の知覚性部分の上行性根であるとされる。

もう一つ重要なのが眼に行く線維系Augen-Faser-systemで、これは中前頭回後部の細胞から起こり、その神経突起は放線冠内を下行し、内包内ではその膝の近くに位置する。

ここから2つの線維束が出る(図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根))。1つは錐体路とともに走り、橋の領域で被蓋に移行し、縫線で交叉して対側の外転神経核に向かう。外転神経核は内側縦束の線維(図503(前庭神経の核と伝導路II) 参照)により内側眼球直筋を支配する動眼神経核の部分と結合している。第2の線維束はおそらく上丘と視床後部の間で上述のものから分岐する。そして被蓋に達し、一部は対側に行き、未解明の経路を通って対側の動眼神経核の他の部分と同側の滑車神経核に達する。

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図464(橋の横断面II)

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図467(橋の横断面V)

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図469(中脳と上丘の横断面I)

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図470(中脳と上丘の横断面II)

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図491(動眼神経核と滑車神経核の背面投影図)

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図503(前庭神経の核と伝導路II)

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図508(運動性の脳神経の伝導路、核および根)

外転神経核の細胞の神経突起は交叉せずに腹方へ走り(図464(橋の横断面II))、橋の下縁から外へ出る。滑車神経核の細胞の神経突起は背方へ走り、前髄帆の領域で完全に交叉して四丘板の後ろで外へ出る(図466(橋の横断面IV)図467(橋の横断面V))。最後に動眼神経核の細胞の神経突起(図469(中脳と上丘の横断面I)図470(中脳と上丘の横断面II)図491(動眼神経核と滑車神経核の背面投影図))は大部分が腹方へ走り、交叉しない。ただし、動眼神経の主核下部から出る一部の神経突起は、この核の背方で交叉する。

両者が集まって束を形成し、その大部分が外側に凸の弓を描きながら進んで動眼神経溝に達し、ここで脳の外に出る。