[図464]橋の横断面II
(高さについては図459(延髄、橋、および中脳の各横断面の位置を示す図)を参照)
顔面神経と外転神経の根線維、後脳オリーブ核(Nucleus olivaris metencephali)が見える。有髄神経線維は黒、神経細胞は赤で示されている。[*は内側隆起核を示す]
(注:本図のNucleus trapezoidesは誇張されすぎている。人脳ではこの核は非常に貧弱で、図示するに値しないほどである。―小川鼎三)
次の断面は橋の下部を通る。この断面の外側部を占める密な線維集団が橋腕である。橋腕は内側腹方に走り、橋の領域で個々の線維束に分かれる。この線維束の一部は浅橋線維Fibrae pontis superficialesとなり、錐体の腹方を横断して走る。これにより錐体は表面から隠れる。錐体自体は橋の範囲では橋縦束Fasciculi longitudinalesと呼ばれる。橋腕の線維の一部は深橋線維Fibrae pontis profundaeとなり、錐体とその背方部分の間に入り込む。橋の横走線維束は正中線で交叉する。これらの線維束の間には大きな灰白質集団があり、これが橋核Nuclei pontisである。橋縦束、橋核、橋線維が合わさって橋底部Pars basialis pontisを形成し、橋背部Pars dorsalis pontis(橋被蓋Brückenhaube)は錐体を除いた延髄の続きをなす。
橋核には同側の皮質橋核路Tractus corticopontini, Großhirn-Brückenbahnが終止する。橋核の細胞の神経突起は橋の横走線維束となって縫線で交叉し、対側の橋腕を形成し、橋[核]小脳路Tractus pontocerebellaresとなって小脳皮質に達する。
核については、脳室底の灰白質内に内側から順に内側隆起核、前庭神経外側核、前庭神経背側核が存在する。正中溝の両側にある卵円形の線維束は顔面神経の内膝の横断面である。その腹方には**内側縦束(後縦束)**Tractus longitudinalis medialisがあり、その線維束は互いに密接して並び、横断面で三角形の領域を占める。内側縦束の側方には外転神経の根線維束があり、これは外転神経核の内側面から出て、まず弓状に内側に曲がり、次いで斜めに下方かつ腹方へ網様質、内側毛帯、橋縦束を貫いて走る。橋から出る部位は橋の下縁であり、この断面には現れていない。外転神経核の背外側では顔面神経根の第2部Pars secunda radicis nervi facialisが、三叉神経脊髄路のすぐ内側縁に沿って腹方に走る。三叉神経脊髄路は顕著に発達しており、その中に多数の灰白質塊が散在している。
顔面神経根の第2部の内側にはU字形に湾曲した板状の灰白質があり、これは後脳オリーブ核Nucleus olivaris metencephaliである。その内側に接する2群の神経細胞は台形体核Nucleus trapezoides, Trapezkernと呼ばれ、これは後脳オリーブ核と同様に台形体Corpus trapezoidesに属している。台形体は内側毛帯の領域を通って横走する線維群であり、正中線で交叉している。
この線維は蝸牛神経核の細胞の神経突起であり、聴覚伝導路の二次ニューロンである。その一部は後脳オリーブ核と台形体核に終止し、これらの核には聴覚伝導路の三次ニューロンの神経細胞がある。その神経突起については後述するが、(聴覚をつかさどる)外側毛帯Lemniscus lateralis(acusticus)となって四丘体に達する(図501(蝸牛神経の核と伝導路) )。
内側毛帯の領域はまだ縫線に密接しているが、ここでは延髄の高さよりもさらに外側に広がっており、そのため背腹方向には扁平になっている。