[図469] 中脳と上丘の横断面I
(高さについては図459(延髄、橋、および中脳の各横断面の位置を示す図)を参照)。
動眼神経核と黒核が観察される。有髄神経線維は黒色、神経細胞は赤色で表示。
次の断面は背方では上丘の領域、腹方では大脳脚を通る。四丘体では層構造が見られる。上丘の表面のすぐ下には有髄神経線維の薄い層があり、その次に上丘灰白層(Stratum griseum colliculi rostralis)という灰白質の層があり、さらにその下に上丘核(Nucleus colliculi rostralis)がある。
結合腕交叉はすでに完了している。交叉を終えた線維束は被蓋内で正中線のすぐそばに円みを帯びた索として集まっている。この線維群の背方には両側に内側縦束があり、内側縦束のさらに背方でその線維束の間に動眼神経核(Nucleus originis nervi oculomotorii)の細胞群がある。動眼神経の根線維は内側縦束の線維束の間を通り、結合腕を貫いて、外側に凸の弓を描いて腹方に進み、動眼神経溝に達する。視床オリーブ路は変わらずその場所にあり、内側毛帯の位置はさらに側方に移動し、視蓋脊髄路は背方にある。
大脳脚は横断された神経線維の大きな集団であり、その背方には黒核(黒質)(Nucleus niger)がある。これは被蓋に属する。黒核は緻密帯(Zona compacta)と網様帯(Zona reticularis)の2部からなり、これはSpatzの言う「黒色部(Pars nigra)と赤色部(Pars rubra)、schwarze und rote Zone」である。黒色部のみがメラニンを含む大きな神経細胞を持ち、これは背方かつ内側下方にある。赤色部は腹方かつ外側上方にあり、淡蒼部(淡蒼球)に似た構造を持ち、有髄神経線維が豊富で、大きな神経細胞がまばらに存在する。
黒核は大脳皮質(弁蓋)、淡蒼球および上丘と双方向の結合を持つ。また感覚伝導路からの線維(内側、外側両毛帯からの側枝)を受け、赤核に線維を送り、赤核脊髄路を通じて脊髄の運動性の根細胞に作用する。
上丘に入ってくる伝導路は嗅覚、視覚、聴覚を伝える線維および身体の末梢部からの線維である。嗅覚を伝える線維は脳弓(弓隆)を通り(皮質乳頭路Tractus corticomamillaris)、乳頭体を経て、あるいは手網核および脚間核(Ganglion intercrurale)を通って来る。視覚を導く線維は視索から来る(図504(視覚伝導路))。聴覚を伝える線維は外側毛帯の側枝である(図501(蝸牛神経の核と伝導路))。身体の末梢部からの線維は内側毛帯と三叉神経のいわゆる「二次」経路("sekundäre" Trigeminusbahn)および脊髄視蓋路の線維である。
上丘から出ていく伝導路は次のとおりである:視蓋脊髄路、黒核に達する線維、小脳あるいは赤核を経て行くものである。視蓋脊髄路は視覚-聴覚反射路であり、これは背側被蓋交叉(dorsale Haubenkreuzung)(図469(中脳と上丘の横断面I) )で対側に移った後、内側縦束の中を下方に走る。その線維は延髄の網様質および脊髄に終わる。