[図466]橋の横断面IV
(高さについては図459(延髄、橋、および中脳の各横断面の位置を示す図)を参照)。
結合腕交叉の下部と滑車神経交叉を通る断面。有髄神経線維は黒色、神経細胞は赤色で表示。
この断面は橋の上部と滑車神経の出る部位を通る。
橋底部Pars basialis pontisは全横断面積の半分をはるかに超える大きさである。そこにある縦走線維束は著しく増加し、これらは辺縁部でまとまった集合をなし始めている。
橋背部の上方には非常に小さくなった第四脳室がある。その底の灰白質には正中線の近くに縫線背側核Nucleus dorsalis raphesがあり、側方には色素を豊富に持つ神経細胞の2群があり、これが菱形窩の上部に青斑Locus caeruleusを形成する基となっている。この神経細胞群の外側には横断された神経線維(この線維は細くなく、むしろ太い方である。[小川鼎三])の集まった幅の狭い鎌形の部分、すなわち三叉神経中脳路Tractus mesencephalicus nervi trigeminiがある。その線維の間には大きな円い単極の神経細胞があり、これが三叉神経中脳核Nucleus accessorius (mesencephalicus) n. trigeminiである。縫線背側核の腹方には、今や極めて明確に境された内側縦束Tractus longitudinalis medialisが見られる。
青斑の細胞は多くの学者により三叉神経起始核Nucleus originis n. trigeminiとみなされ、また他の学者は三叉神経終止核Nucleus terminalis n. trigeminiとみなしている。(青斑の細胞群はおそらく三叉神経と直接の関係がないであろう。[小川鼎三])
第四脳室の天井は、この高さでは前髄帆によって形成され、滑車神経交叉Decussatio nervorum trochleariumがその中にある。右側には脳から出ていく滑車神経の線維束が切られている。その同じ場所に斜めに切られた楕円形の線維束がある。これは反対側の滑車神経に属する線維であって、交叉した後にまず外側に進み、次いで上方かつ内側腹方に走る。それが滑車神経下行部Pars descendens nervi trochlearisである。
三叉神経中脳路の外側にある横断された神経線維の密な集まりは結合腕Brachium conjunctivumである。この線維団の一部が内側腹方に進んで正中線に達し、ここで交叉している。これが結合腕交叉Decussatio brachiorum conjunctivorumである(また小脳大脳脚交叉Decussatio crurum cerebello-cerebraliumあるいは大被蓋交叉große Haubenkreuzungとも呼ばれる)。両側の結合腕に囲まれた明るい部分には、側方に視床オリーブ路Tractus thalamoolivarisがあり、また正中線に接して上中心核Nucleus centralis superiorがある。結合腕の側方には外側毛帯Lemniscus lateralisがあり、その内部に外側毛帯核Nucleus lemnisci lateralisが見られる。外側毛帯の腹方には脊髄視蓋路Tractus spinotectalisがあり、脊髄視蓋路のさらにいくらか内側に赤核脊髄路Tractus rubrospinalisがある。
内側毛帯Lemniscus medialisは正中線から遠く離れ、その外側部は橋の外面のすぐ下にある。その横断面はここでは平たくて幅の広い帯状である。