骨迷路 Labyrinthus osseus
骨迷路は、側頭骨錐体部内に存在する内耳の骨性外殻であり、聴覚と平衡感覚を司る膜迷路を保護・収容する重要な解剖学的構造です。その緻密な骨質と複雑な三次元形態は、音波の伝達と頭部運動の検出に最適化されています(Schuknecht and Gulya, 2010)。

J0101 (14 cm長(4ヶ月)胎児の内頭蓋底)

J0102 (19cm長(5ヶ月の初め)胎児の内頭蓋底)

J0103 (28cm長(6ヶ月)胎児の内頭蓋底)

J0355 (頭蓋骨:後頭前頭方向からのX線像)

J1048 (右耳の骨迷路の排出口:外側前方からの図)

J1049 (右耳の骨迷路の排出口:下方からの図)

J1050 (頭蓋骨中の右耳骨迷路の位置:上方からの図)

J1055 (右側の側頭骨を横切った断面で、上部から見た下半分の図)

J1056 (右側の側頭骨を垂直に切断し、外側の切断面を内側からの図)

J1058 (右の蝸牛の垂直断面:側面からの垂直断面)

J1061 (右の骨迷路と膜迷路の模式図)
解剖学的構造
1. 基本構成と位置
- 骨迷路は側頭骨錐体部の海綿質骨内に位置し、厚さ約0.3〜0.4mmの極めて緻密な骨質(otic capsule bone)で構成されています(Drake et al., 2020)
- 全長は約20mm、容積は約0.2mlで、前庭、三半規管、蝸牛の3つの主要部分から構成されます(Standring, 2021)
- 骨迷路の内面は薄い骨膜で覆われ、その内部には外リンパ液(perilymph)が満たされています
2. 前庭(Vestibule)
- 前庭は骨迷路の中央部に位置する卵円形の空間で、前後径約5mm、高さ約3mmの大きさです(Anson and Donaldson, 2017)
- 外側壁には前庭窓(oval window)があり、アブミ骨底が嵌合しています
- 内部には膜迷路の卵形嚢(utricle)と球形嚢(saccule)が収容されており、それぞれ重力と直線加速度を感知します
- 前庭の内側壁には前庭神経が通過する多数の小孔(前庭陥凹)が存在します
3. 三半規管(Semicircular Canals)
- 前半規管(anterior/superior semicircular canal):垂直面で前外側方向に配置され、長さ約15〜20mm
- 後半規管(posterior semicircular canal):垂直面で後外側方向に配置され、長さ約18〜22mm
- 外側半規管(lateral/horizontal semicircular canal):水平面に対して約30度傾斜し、長さ約12〜15mm(Curthoys et al., 2019)
- 各半規管は互いに約90度の角度で配置され、三次元空間での頭部回転運動の検出を可能にしています
- 各半規管の一端は膨大部(ampulla)を形成し、その内部に膨大部稜(crista ampullaris)という感覚上皮が存在します
- 前半規管と後半規管は共通脚(crus commune)で前庭に開口します