大胸筋 Musculus pectoralis major

大胸筋は胸部前面を覆う扇形の大型筋で、上肢の運動と肩関節の安定性に中心的な役割を果たします。その解剖学的構造の複雑さと臨床的重要性から、整形外科、リハビリテーション医学、乳房外科において特に注目される筋です(Moore et al., 2022)。

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J0167 (右鎖骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

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J0168 (右鎖骨、筋の起こる所と着く所:下方からの図)

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J0175 (右上腕骨とその筋の起こる所と着く所:前方からの図)

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J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

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J0428 (右側の大胸筋:前面図(半概略))

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J0440 (腹直筋:腹面図)

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J0462 (右脇の下の筋:尾側図)

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J0463 (右腋窩の筋膜:尾側図)

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J0465 (右肩関節の腹側の筋:掌側図)

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J0574 (右腋窩の動脈、正面図)

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J0576 (右上腕の動脈、手掌側からの図)

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J0810 (後期妊娠中の右乳腺:乳房筋に対する位置で自由に調整された標本)

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J0811 (妊娠中の右乳房の水平断、上半分:下方からの図)

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J0932 (右側の腕神経叢とその短い枝:前面からの図)

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J0934 (右の腕神経叢(鎖骨下部)が下から前に向かっている図)

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J0939 (右上腕の神経幹:内側からの図)

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J0954 (体幹の皮神経:正面右側からの図)

解剖学的特徴

発生と形態学

大胸筋は発生学的に上肢の屈筋群から派生し、胎生期に前胸壁へと移動して広範な付着部を獲得します。この発生過程により、筋は前胸壁に大きな翼状または扇形の形態を形成し、胸部の輪郭を決定する主要な要素となります(Schuenke et al., 2020)。

筋の構造と線維配列

大胸筋は起始部の位置に基づいて3つの機能的部分に区分されます(Standring, 2021):

これら3つの部分から起こる筋線維は外側方向に集束し、腋窩前壁を形成しながら上腕骨に向かいます。重要な解剖学的特徴として、線維はらせん状に180度捻転しながら停止部に達します。この捻転により、最下部(腹部)の線維が最上方に、最上部(鎖骨部)の線維が最下方に停止する配列となります(Drake et al., 2019)。

停止部の構造

大胸筋は上腕骨の大結節稜(結節間溝の外側唇)に停止します。停止腱は約5cmの幅を持ち、二層構造を形成します(Drake et al., 2019):

両層の間には滑液包(大胸筋下滑液包)が存在し、腱の滑らかな動きを促進します。

神経支配

大胸筋は腕神経叢の2つの神経により二重支配を受けます(Agur and Dalley, 2021):