前縦靱帯 Ligamentum longitudinale anterius

J0290 (腰椎の一部の正中断、右切断半分:左方からの図)

J0292 (胸椎と肋骨、椎間円板:前方からの図)

J0296 (後頭骨と第1から第3の頚椎は、前方から見ると靱帯と結合する)

J0302 (後頭骨と最初から三番目までの頚椎を含む正中矢状断とそのリング状の組織:左方からの若干図式化された図)

J0304 (右側の肋骨と関連する椎骨、靱帯)

J0306 (肋骨と関連する椎骨と靱帯:上方からの図)

J0325 (右の骨盤の靱帯:前面から少し上からの図)

J0431 (右背側胸壁の筋:前面図)

J0434 (横隔膜:腰部、腹腔からの図)

J0491 (右の鼡径部の筋膜:腹側からの図)

J0674 (咽頭とその周囲の右半分:左側からの図)
前縦靱帯は、脊柱の前面を上下に走る強靭な帯状の靱帯であり、脊柱の安定性を維持する重要な構造です(Standring, 2020)。解剖学的特徴と臨床的意義は以下の通りです:
1. 解剖学的特徴
- 位置と走行:後頭骨底部(前環椎後頭膜として始まり)から仙骨前面まで連続的に伸びる長大な靱帯です(Neumann, 2017)。
- 形態:頚椎部では狭く厚い構造(幅約6mm)ですが、胸椎下部から腰椎にかけて次第に幅広く(最大25mm程度)薄くなります(Gray et al., 2021)。
- 微細構造:主に縦走する膠原線維束からなり、表層には長い線維が存在し、深層には各椎骨の前面を結ぶ短い弓状の線維が配列しています(Bogduk, 2012)。
- 付着様式:椎間板や椎体の上下縁(輪状隆起)との結合は強固ですが、椎体中央部(腹側面中央部)との結合は比較的疎であり、血管の通過を許容しています(Moore et al., 2018)。
- 組織学:密性結合組織で構成され、Type I コラーゲン線維が主体となっています。弾性線維も少量含まれます(Yahia and Newman, 1993)。
2. 機能的役割
- 脊柱の過度な後屈(伸展)を制限します。特に頚椎と腰椎の安定性に重要な役割を果たします(Panjabi and White, 2001)。
- 脊柱の前方安定性を維持し、椎間板に対する支持構造として機能します(Cramer and Darby, 2014)。
- 脊柱の縦軸方向の安定性にも寄与し、椎体間の連結を補強します(McGill, 2016)。
3. 臨床的意義
3.1 強直性脊椎炎(Ankylosing Spondylitis, AS)
強直性脊椎炎は、前縦靱帯の石灰化と骨化を特徴とする慢性炎症性疾患です(Braun and Sieper, 2007)。病態の進行に伴い、以下の臨床所見が認められます:
- 画像所見:X線検査では「竹様脊柱(bamboo spine)」と呼ばれる特徴的な所見が認められ、前縦靱帯の連続的な骨化により椎体間が架橋されます(Baraliakos et al., 2005)。
- MRI所見:疾患早期にはSTIR(Short TI Inversion Recovery)画像で前縦靱帯付着部に骨髄浮腫や炎症所見が検出されます(Weber et al., 2009)。
- 臨床症状:脊柱の可動性制限、特に腰椎前屈の著明な制限が認められます。Schober testやmodified Schober testで客観的評価が可能です(van der Heijde et al., 1999)。
- 合併症:骨化した前縦靱帯は脆弱性が増すため、軽微な外傷でも骨折のリスクが高まります(Caron et al., 2010)。