第5中足骨粗面 Tuberositas ossis metatarsi quinti [V]
解剖学的特徴
第5中足骨粗面(結節)は、第5中足骨の近位端である第5中足骨底の外側面に位置する顕著な骨性隆起である。この構造は足の外側縁において重要な解剖学的ランドマークとなっている (Moore et al., 2018; Standring, 2020)。
位置と構造:
- 第5中足骨底の外側方に突出し、足の外側縁で最も外側に位置する骨性突起として認識される (Gray's Anatomy, 2020)。
- 近位方向および外側方向へ突出し、通常は立方骨との関節面の遠位外側に位置する (Netter, 2018)。
- 体表から容易に触診可能であり、足の外側縁の約中央の高さで触知できる (Hoppenfeld, 1976)。
筋付着部:
- 短腓骨筋 (fibularis brevis muscle / peroneus brevis muscle) の主要な付着部位である (Moore et al., 2018)。
- 短腓骨筋腱は外果の後方を通過し、この粗面に停止することで、足の外反(回外)と底屈に作用する (Standring, 2020)。
- 時に長腓骨筋の一部の線維もこの部位に付着することがある (Sarrafian, 1993)。
靭帯付着部:
- 足底筋膜の外側部(外側束)がこの粗面に起始する (Stecco et al., 2013)。
- 第5中足骨底靭帯や立方中足靭帯の一部もこの領域に付着する (Standring, 2020)。
発生学的変異
第5中足骨粗面は、発生学的に独立した骨化中心を持つことがあり、以下の変異が知られている:
- **ヴェサリウスの骨 (Os vesalianum pedis):**第5中足骨底から分離した副骨で、第5中足骨粗面が独立した小骨として存在する状態。人口の約0.1〜1%に見られる (Cilli & Akçaoğlu, 2005; Kose et al., 2014)。
- **第5中足骨粗面の過剰発達:**粗面が異常に大きく突出している場合があり、靴との摩擦による症状の原因となることがある (Fallat et al., 1998)。
- 通常、10〜12歳頃に第5中足骨底の骨端核が出現し、14〜16歳頃に癒合する (Ogden et al., 1994)。
臨床的意義