大腿骨頭窩 Fovea capitis femoris

J0228 (右の大腿骨:前方からの図)

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0230 (右大腿骨、内側からの図)

J0235 (右の大腿骨、近位端部:前方からの図)

J0330 (右の股関節:前方からの図)

J0333 (右の股関節:内側からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)
解剖学的記述
位置と形態:
- 大腿骨頭の関節面のほぼ中央、頂点からやや下内側に位置する小さな陥凹部である。
- 大腿骨頭の球状関節面の中で、唯一関節軟骨に覆われていない部位である。
- 形態は個体差が大きく、楕円形(54.7%)、三角形(35.5%)、円形(4.1%)、菱形(3.4%)、不正形(2.3%)などが報告されている(平田、2000)。
- 深さは通常2~5mm程度で、大部分は窪んだ形態を呈するが、一部の症例(6.8%)では骨隆起や平坦化が観察されることもある(平田、2000)。
靭帯および血管の付着:
- **大腿骨頭靭帯(ligamentum capitis femoris)**の付着部位として機能する。この靭帯は寛骨臼の切痕部から起こり、大腿骨頭窩に付着する円錐形の靭帯である(Gardner et al., 1975)。
- 大腿骨頭靭帯内には**大腿骨頭動脈(arteria ligamenti capitis femoris)**が走行し、閉鎖動脈の枝として大腿骨頭の中心部へ血液を供給する(Trueta & Harrison, 1953)。
- この血管は特に小児期において大腿骨頭への重要な血液供給源であるが、成人では大腿骨頭への血流の約10~30%程度を担うに過ぎず、主要な血液供給は内側・外側大腿回旋動脈に依存する(Trueta & Harrison, 1953; Gautier et al., 2000)。
関節内での関係:
- 股関節腔内において、大腿骨頭窩は**臼蓋横靭帯(transverse acetabular ligament)および臼蓋唇(acetabular labrum)**と近接する(Gardner et al., 1975)。
- 関節包内に位置するため、滑膜に覆われた環境下にある。
臨床的意義
大腿骨頭壊死との関連:
- 大腿骨頭窩を通過する血管供給の障害は、**大腿骨頭壊死(avascular necrosis of femoral head; AVN)**の発症に関与する可能性がある(Mont et al., 2006)。
- 特に大腿骨頸部骨折、股関節脱臼、ステロイド使用、アルコール多飲などにより血流が遮断されると、大腿骨頭の壊死を引き起こすことがある(Mankin, 1992)。
- 小児では大腿骨頭動脈の寄与が大きいため、Perthes病(Legg-Calvé-Perthes disease)などの疾患において大腿骨頭窩の血管供給の重要性が増す(Catterall, 1971)。