大腿骨頭 Caput femoris
大腿骨頭は大腿骨の近位端に位置する球状の関節頭で、股関節を構成する重要な解剖学的構造です(Standring, 2020)。

J0003 (大人の新鮮な右大腿骨の近位部、前方からの図)

J0004 (大人の新鮮な右大腿骨の近位部:前方からの後半部の前頭断図)

J0228 (右の大腿骨:前方からの図)

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0235 (右の大腿骨、近位端部:前方からの図)

J0333 (右の股関節:内側からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)
解剖学的特徴
- 形状と構造:大腿骨頭は約2/3球状の形態を呈し、直径は約4.5〜5cmです。関節軟骨で覆われた滑らかな関節面を持ち、寛骨臼と関節を形成します(Standring, 2020)。
- 方向性:骨頭の頂点は内側上方に向かうと同時に、やや前方に傾斜しています。この角度は頸体角(約125度)と前捻角(約10〜15度)によって規定されます(Standring, 2020)。
- 大腿骨頭窩(Fovea capitis femoris):骨頭のやや下内側に位置する小さな陥凹で、大腿骨頭靱帯(円靱帯)が付着します。この部分には関節軟骨が存在しません(Standring, 2020)。
- 血液供給:外側大腿回旋動脈と内側大腿回旋動脈からの枝、特に内側大腿回旋動脈の外側上行枝が主要な血液供給源です。大腿骨頭靱帯を通る閉鎖動脈からの栄養動脈は成人では最小限です(Standring, 2020)。
機能と生体力学
- 荷重伝達:大腿骨頭は立位時に体重の約3〜4倍、歩行時には最大7倍の荷重を受けます。球状の形状により、荷重を広い面積に分散させます(Leunig & Ganz, 2014)。
- 運動範囲:股関節の球関節構造により、屈曲・伸展、外転・内転、内旋・外旋、さらに分廻し運動が可能です(Standring, 2020)。
- 関節の安定性:深い寛骨臼に収まることで、肩関節と比較して高い安定性を有します(Leunig & Ganz, 2014)。
臨床的意義
- 大腿骨頭壊死(無腐性壊死):血流障害により骨頭が壊死する疾患です。ステロイド使用、アルコール多飲、外傷などが原因となります。早期発見にはMRIが有用です(Mont et al., 2015)。
- 大腿骨頸部骨折:高齢者に多発する骨折で、骨頭への血流障害を来しやすく、骨頭壊死や偽関節のリスクがあります。Garden分類が用いられます(Garden, 1961)。
- 変形性股関節症:関節軟骨の摩耗により骨頭と寛骨臼の変形を来します。日本では臼蓋形成不全を背景とする二次性が多いです(日本整形外科学会, 2018)。
- Perthes病(Legg-Calvé-Perthes病):小児期の特発性大腿骨頭壊死症で、4〜8歳の男児に好発します。血流障害により骨頭が一時的に壊死し、その後再生過程で変形を来すことがあります(Herring et al., 2004)。
- 大腿骨頭すべり症:思春期に骨頭骨端が後下方にすべる疾患です。肥満傾向の男児に多く、内分泌異常が関与することもあります(日本整形外科学会, 2018)。
- 人工股関節全置換術(THA):進行した変形性股関節症や大腿骨頭壊死に対して、骨頭を人工物に置換する手術が行われます(Leunig & Ganz, 2014)。
発達と加齢変化