前庭窓 Fenestra vestibuli(卵円窓 Oval window)
前庭窓は中耳と内耳の境界に位置する重要な解剖学的構造で、音の伝達において中心的な役割を果たします。以下に詳細な解剖学的特徴と臨床的意義について記述します。

J0030 (右の側頭骨:切断、外側部を削り取って鼓室とその周囲を示す図)

J0032 (新生児の右側頭骨:外側からの図)

J0033 (新生児の右側頭骨:外側からの図)

J1048 (右耳の骨迷路の排出口:外側前方からの図)

J1049 (右耳の骨迷路の排出口:下方からの図)

J1052 (浸軟化した骨にある右の蝸牛、外側から開放)

J1055 (右側の側頭骨を横切った断面で、上部から見た下半分の図)

J1056 (右側の側頭骨を垂直に切断し、外側の切断面を内側からの図)

J1057 (右側の側頭骨を垂直に切り取った部分、中央部分:外側からの図)

J1061 (右の骨迷路と膜迷路の模式図)
解剖学的特徴
位置と形態
- 鼓室の内側壁(迷路壁 paries labyrinthicus)に位置する卵形の開口部で、中耳腔と内耳の前庭を隔てる境界構造である (Standring, 2020)
- 大きさは成人で約3.0×1.5mmの楕円形を呈し、長軸は前下方から後上方へ斜めに走行する (Schuknecht, 1993)
- 前庭窓の前方には顔面神経管(facial canal)、後方には外側半規管の膨大部(ampulla)が位置する (Merchant and Nadol, 2010)
- 直下には蝸牛の基底回転による隆起である岬角(promontory)が存在し、鼓室神経叢(tympanic plexus)がこの表面を覆う
組織学的構造
- 前庭窓の縁は緻密骨で構成され、溝状の構造(fossula fenestrae vestibuli)を形成している (Anson and Donaldson, 1981)
- この溝には輪状靭帯(annular ligament)が存在し、アブミ骨底板(stapes footplate)との間に弾性結合を形成する (Alberti, 2001)
- 輪状靭帯は弾性線維に富む結合組織で、アブミ骨の振動を効率的に内耳液へ伝達しつつ、過度の圧力変化から内耳を保護する機能を持つ (Merchant et al., 1996)
- 前庭窓を閉鎖するアブミ骨底板の厚さは約0.5mmで、前部が後部よりわずかに厚い (Schuknecht, 1993)
周囲構造との関係
- この開口部は前庭(vestibule)へと通じており、内部は外リンパ液(perilymph)で満たされている
- 前庭内には卵形嚢(utricle)と球形嚢(saccule)が位置し、前庭窓の振動は直接これらの平衡感覚器に影響を与える (Pickles, 2012)
- 前庭窓の内側には前庭水管(vestibular aqueduct)の開口部があり、内リンパ嚢(endolymphatic sac)との交通を担う (Gulya et al., 2020)
機能的特徴
音の伝達機構