空腸は剖検に際してしばしば空虚であったため、「空」という意味からnestisと呼ばれ、のちにjejunumとなった。十二指腸と回腸の間に位置し、長さは約2.4cm、直径は約2.7cmの小腸部分である。空腸曲で十二指腸と境を成し、一方、回腸との境は明瞭ではなく、赤みを帯び、幅広い腸間膜を介して後腹壁の腸間膜根に付着している。壁の厚さは回腸に比してやや厚く、輪状ひだが大きくてよく発達しており、血管分布が豊富で動脈弓が少なく、直細動脈が長い。 腸絨毛は十二指腸と同様に3600個/cm2であり、空腸の吸収上皮面積は37m2に達する。粘膜固有層には孤立リンパ小節が発達しており、腸腺の底部にはエオジンに好染する顆粒を持つパネート細胞が見られる。また、腸腺の下半分には腸クロム親和細胞が多数分布し、セロトニンを分泌する。その他、消化器ホルモンの分泌細胞も混ざる。