小円筋 Musculus teres minor

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J0164 (右肩甲骨、筋の起こる所と着く所:前面からの図)

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J0172 (右上腕骨、上端部:上方からの図)

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J0176 (右上腕骨と筋の起こる所と着く所:後方からの図)

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J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

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J0468 (右上腕の筋:背面図)

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J0469 (右上腕の筋:背面図)

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J0470 (右上腕の筋(深層):背面図)

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J0575 (右肩甲骨の動脈:背面図)

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J0933 (右肩甲骨の神経:後方からの図)

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J0947 (右上腕の筋神経:後方からの図)

解剖学的特徴

位置と形態

小円筋は肩甲骨後面の外側縁から起始し、上腕骨大結節に停止する細長い円柱状の筋である。棘下筋の下外側に位置し、その大部分は三角筋に覆われている。小円筋はローテーターカフ(回旋筋腱板)を構成する4つの筋のうちの1つであり、棘上筋、棘下筋、肩甲下筋とともに肩関節の動的安定化機構において中心的な役割を果たしている(Standring, 2016)。

形態学的には、小円筋は比較的小型の筋であり、その断面積は約2.0cm²、長さは約8-10cmである。これは棘下筋の約1/3の大きさに相当し、ローテーターカフの中では最も小さい筋の一つである(Levangie and Norkin, 2011)。筋の形状は円柱状を呈し、筋線維の配列は比較的平行である。

起始と停止

起始: 小円筋は肩甲骨の外側縁(腋窩縁)の上方2/3から起始する。具体的には、肩甲骨背側面の外縁に沿った粗面と、この部位に付着する筋膜から筋線維が発生する(Moore et al., 2018)。起始部は棘下筋の起始部と連続しており、両筋の境界は必ずしも明瞭ではない。

走行: 筋線維は起始部から外上方に向かって斜めに走行し、肩関節の後面を横断する。走行中、筋は肩関節包の後面に密接に接しており、一部の筋線維は関節包と癒合している。この解剖学的配置により、小円筋は肩関節の動的安定化に直接寄与することができる。

停止: 小円筋は上腕骨大結節の最下部(第三面または下方面)に停止する。停止部の直前で筋は腱に移行し、この腱は幅約1.5-2cm、長さ約2-3cmである。停止腱は肩関節包の後面と強固に結合しており、この結合により筋収縮時に関節包を緊張させ、関節包が関節腔内に挟み込まれることを防いでいる(Neumann, 2017)。停止部は棘下筋の停止部の下方に位置し、大円筋の停止部とは明瞭に区別される。

神経支配と血管供給

神経支配: 小円筋は腋窩神経(Axillary nerve, C5-C6神経根由来)の後枝によって支配される。これは小円筋の解剖学的・機能的特徴を理解する上で極めて重要な点である。腋窩神経は外側腋窩隙(四辺形腔)を通過した後、三角筋後部と小円筋に分枝を送る。小円筋への神経枝は通常1-2本であり、筋の深部面から筋内に進入する(Agur and Dalley, 2017)。

この神経支配のパターンは、小円筋と棘下筋を区別する最も重要な解剖学的特徴である。棘下筋は肩甲上神経(Suprascapular nerve, C5-C6)によって支配されるため、両筋は神経支配が異なる。したがって、腋窩神経損傷では小円筋と三角筋が麻痺するが棘下筋は保たれ、肩甲上神経損傷では棘上筋と棘下筋が麻痺するが小円筋は保たれる。この違いは臨床診断において重要な鑑別点となる。

血液供給: 小円筋への血液供給は主に以下の動脈から行われる:

これらの動脈は筋内で吻合し、豊富な血管網を形成している。このため、小円筋は比較的良好な血液供給を受けており、虚血性損傷のリスクは低い(Standring, 2016)。

機能と生体力学

主要機能

小円筋の主要な機能は上腕骨の外旋(外側回旋、lateral rotation)である。筋が収縮すると、上腕骨頭を軸として上腕を外側に回転させる。小円筋が発揮できる最大外旋トルクは約9Nmであり、これは棘下筋の約半分に相当する(Kuechle et al., 2000)。ただし、小円筋は棘下筋よりも下方に位置するため、やや異なる作用線を持ち、特に上腕が挙上された位置での外旋に重要な役割を果たす。