顎舌骨筋 Musculus mylohyoideus

J0065 (下顎の右半分、筋の起こる所と着く所:内側からの図)

J0074 (舌骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

J0417 (頚部の筋(2層):前方からの図)

J0419 (頚部の筋(第3層):前方からの図)

J0422 (口腔底の筋:口腔側からの図)

J0612 (頚部の静脈、腹側図)

J0639 (頭頚部の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0640 (頭部の前頭断、後方からの図)

J0669 (唾液腺:右側の下顎の右半分を除去した図)

J0670 (下顎腺とその周囲:右下方からの図)

J0913 (下顎神経の分岐、深層:右方からの図)
顎舌骨筋は、口腔底を形成する重要な筋肉であり、解剖学的および臨床的に重要な構造である(Drake et al., 2020; Standring, 2021)。
解剖学的特徴
起始と停止
- 起始:
- 下顎骨内側面の顎舌骨筋線(linea mylohyoidea)から起こる(Standring, 2021)
- 顎舌骨筋線は、下顎枝前縁から第3大臼歯付近まで斜めに走る隆起線である(Norton, 2017)
- 筋線維は顎舌骨筋線全長にわたって付着する(Moore et al., 2019)
- 停止:
- 後方の筋束:舌骨体部の前面に直接付着する(Standring, 2021; Netter, 2019)
- 前方の筋束:正中線で左右の筋と交わり、正中縫線(raphe mylohyoideus)を形成する(Drake et al., 2020)
- 正中縫線はオトガイ舌骨筋の起始部としても機能する(Moore et al., 2019)
筋の構造と配置
- 形態的特徴:
- 左右対称の平坦な筋板であり、両側の筋が合わさって口底隔膜(diaphragma oris)を形成する(Norton, 2017; Drake et al., 2020)
- 筋束は後内側から前外側に向かって走行する(Standring, 2021)
- 筋の厚さは後方で約2-3mm、前方で約1-2mmと薄い(Berkovitz and Moxham, 2016)
- 周囲構造との関係:
- 浅層(下方):顎二腹筋前腹、皮下組織、皮膚(Moore et al., 2019)
- 深層(上方):オトガイ舌骨筋、舌下腺、舌下神経、舌動脈(Standring, 2021)
- 外側:顎下腺の深部が顎舌骨筋の後縁を回り込んで口腔底に達する(Norton, 2017)
- 内側:舌根部、口腔粘膜(Drake et al., 2020)
神経支配と血液供給
- 神経支配:
- 顎舌骨筋神経(nervus mylohyoideus)により支配される(Moore et al., 2019)
- 顎舌骨筋神経は下歯槽神経から分岐し、下顎孔の直前で下歯槽神経から分かれる(Berkovitz and Moxham, 2016)
- 顎舌骨筋の下面(外側面)を前方に走行し、筋を支配する(Standring, 2021)
- 顎舌骨筋神経は顎二腹筋前腹にも枝を送る(Norton, 2017)
- 血液供給:
- 主に顎舌骨筋動脈(下歯槽動脈の枝)により栄養される(Moore et al., 2019)
- 舌下動脈、顔面動脈の顎下枝からも副次的な血液供給を受ける(Standring, 2021)
- 静脈還流は同名の静脈を経て顔面静脈、舌静脈に注ぐ(Drake et al., 2020)
機能
主要な機能
- 舌骨の挙上と固定:
- 舌骨を前上方に挙上し、開口運動を補助する(Netter, 2019; Johnson and Moore, 2021)
- 下顎が固定された状態で収縮すると、舌骨を引き上げる(Standring, 2021)
- 舌骨が固定された状態で収縮すると、下顎を下制する補助筋として作用する(Drake et al., 2020)
- 嚥下時の口腔底挙上:
- 嚥下の口腔期において、口腔底全体を挙上させる(Logemann, 2018)
- 舌を口蓋に押し付け、食塊を咽頭へ送り込む(Matsuo and Palmer, 2015)
- 嚥下時の舌骨前上方移動に重要な役割を果たす(Crary and Carnaby, 2019)
- 口腔底の支持:
- 口腔底の筋性床を形成し、口腔内容物を支持する(Standring, 2021)
- 舌の運動の土台となる安定した基盤を提供する(Shaw and Khan, 2016)
- 発音時における舌の位置決めに寄与する(Johnson and Moore, 2021)
協調運動
- 他の舌骨上筋群との協調:
- 顎二腹筋、茎突舌骨筋、オトガイ舌骨筋と協調して舌骨を挙上する(Moore et al., 2019)
- これらの筋は舌骨を支点として、開口と嚥下の両方に関与する(Standring, 2021)