転子間線 Linea intertrochanterica
転子間線は、大腿骨近位端における重要な解剖学的構造物であり、大腿骨の前面に位置する骨性隆起線です(Gray, 2020; Standring, 2016)。この構造は大腿骨の形態学的特徴を理解する上で不可欠であり、臨床的にも重要な意義を持ちます。

J0228 (右の大腿骨:前方からの図)

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0230 (右大腿骨、内側からの図)

J0235 (右の大腿骨、近位端部:前方からの図)

J0330 (右の股関節:前方からの図)
解剖学的特徴
位置と走行:
- 転子間線は大腿骨の前面において、大転子(greater trochanter)の前下方から小転子(lesser trochanter)の基部に向かって斜めに走行する骨性の隆起線です(Moore et al., 2018)。
- 大腿骨頚部と骨幹部の移行部に位置し、大腿骨頚部の前面を特徴づける構造物です(Netter, 2019)。
- 転子間線は大転子から始まりますが、小転子には直接到達せず、小転子の基部付近で終わります(Standring, 2016)。
- 後面には対応する構造として転子間稜(intertrochanteric crest)が存在し、より顕著な骨性隆起を形成します(Gray, 2020)。
筋付着部位:
- 腸骨大腿靭帯(iliofemoral ligament):股関節包の最も強力な靭帯であり、その下部線維が転子間線に付着します。この靭帯は股関節の過伸展を制限する重要な役割を果たします(Moore et al., 2018)。
- 大腿方形筋(quadratus femoris)の一部線維が転子間線の近傍に付着し、大腿骨の外旋運動に関与します(Standring, 2016)。
- 関節包線維が転子間線に沿って付着し、股関節の安定性に寄与しています(Netter, 2019)。
臨床的意義
大腿骨転子部骨折との関連:
- 転子間線の領域は、高齢者に好発する大腿骨転子部骨折(intertrochanteric fracture)の発生部位として臨床上極めて重要です(Moore et al., 2018)。
- 転子間骨折は関節包外骨折であり、大腿骨頚部骨折(関節包内骨折)と比較して血行が良好であるため、一般的に骨癒合が得られやすいという特徴があります(Gray, 2020)。
- 骨折線が転子間線に沿って走行する場合、不安定型骨折となりやすく、手術的治療が必要となることが多くあります(Standring, 2016)。
画像診断における指標:
- X線撮影やCT、MRI検査において、転子間線は大腿骨近位端の解剖学的指標として利用されます(Netter, 2019)。