腸骨 Os ilium

J0212 (右の寛骨:外側からの図)

J0213 (右の寛骨:内側からの図)

J0214 (右の寛骨:前下からの図)

J0277 (約8ヶ月胎児の右寛骨:外側からの図)

J0278 (10歳の女の子の右の股関節:前下方からの図)

J0327 (右側の仙腸関節:前頭断、前面からの後半部分の図)

J0331 (右の股関節:後方ろからの図)

J0332 (右股関節:後方からの図)

J0334 (右の股関節:前面切断図、前方からの後部切断図)

J0489 (右側の鼡径部の筋を鼡径靱帯の直下で切断した図)

J0493 (右骨盤の筋:外側から遠位の図)
解剖学的概要
腸骨は寛骨を構成する三つの骨(腸骨、坐骨、恥骨)の中で最も大きく、骨盤の外側部および上部を形成する重要な骨です(Gray and Williams, 2000; Standring, 2016)。成人の腸骨は以下の解剖学的特徴を持ちます:
基本構造と発生
- 腸骨は胎生期および出生時には独立した骨として存在し、思春期(約15〜17歳)に坐骨および恥骨と完全に癒合して単一の寛骨を形成します(Scheuer and Black, 2004)
- 癒合は寛骨臼(acetabulum)の中心部で起こり、この部位は三つの骨が会合する「Y字軟骨」として知られています(Moore et al., 2018)
- 腸骨の骨化は胎生8週頃に始まり、二次骨化中心は思春期に出現します(Scheuer and Black, 2004)
腸骨体(Corpus ossis ilii)
- 腸骨体は腸骨の下部の肥厚した部分で、寛骨臼の上方約2/5を形成します(Standring, 2016)
- 寛骨臼は大腿骨頭を受け入れる半球状の深い窩で、股関節を構成します。この部位は体重を下肢に伝達する重要な荷重伝達部位です(Tile et al., 2003)
- 寛骨臼の縁(acetabular rim)は馬蹄形をしており、下方は寛骨臼切痕(acetabular notch)として開いています(Netter, 2019)
- 寛骨臼の中央部には関節面のない寛骨臼窩(acetabular fossa)があり、脂肪組織と関節円靱帯で満たされています(Drake et al., 2020)
腸骨翼(Ala ossis ilii)
- 腸骨翼は腸骨体の上方に扇状に広がる薄い骨板で、外側面(gluteal surface)と内側面(iliac fossa)を持ちます(Agur and Dalley, 2017)
- 外側面(殿筋面)は広く凸面を呈し、前殿筋線、後殿筋線、下殿筋線という三つの弓状線によって区分されます。これらの線は殿筋群(大殿筋、中殿筋、小殿筋)の付着部を示します(Moore et al., 2018)
- 内側面は二つの部分に分かれます:
- 前方の腸骨窩(iliac fossa):滑らかな凹面で、腸骨筋(iliacus muscle)の起始部となります(Standring, 2016)
- 後方の仙骨骨盤面:粗面で、耳状面と腸骨粗面を含みます(Netter, 2019)
腸骨稜(Crista iliaca)
- 腸骨翼の上縁を形成する厚い弓状の骨隆起で、前方は上前腸骨棘、後方は上後腸骨棘で終わります(Moore et al., 2018)
- 腸骨稜は外唇、中間帯、内唇の三つの部分に区分され、それぞれ異なる筋肉の付着部となります:
- 外唇:腹斜外筋、大腿筋膜張筋、広背筋の一部が付着(Agur and Dalley, 2017)
- 中間帯:腹斜内筋が付着(Kendall et al., 2010)
- 内唇:腹横筋、腰方形筋が付着(Moore et al., 2018)