肩甲棘 Spina scapulae

肩甲棘は解剖学的に重要な構造であり、以下のように詳細に定義されます:

  1. 解剖学的特徴:肩甲棘は、肩甲骨の背面に存在する扁平で突出した隆起構造です(Standring, 2016)。この骨性隆起は肩甲骨の後面を横断し、関節窩の上方から外側方向へ斜めに走行しています。肩甲棘は肩甲骨を上棘窩(supraspinous fossa)と下棘窩(infraspinous fossa)に分割しています。
  2. 位置と構造:肩甲棘は内側の脊柱近くから始まり、外側へ拡大しながら延長します。先端部分は肩峰(acromion)と呼ばれ、肩関節の屋根を形成しています(Netter, 2019)。肩峰は肩甲棘の外側部が拡大した部分で、鎖骨外側端と関節を形成し、上肢の懸垂装置として機能します。
  3. 筋の付着部位と機能的意義:
  4. 関節との関係:肩甲棘の外側端である肩峰の内側面には、楕円形の小さな関節面(肩鎖関節面、facies articularis clavicularis)があり、鎖骨外側端と肩鎖関節(acromioclavicular joint)を形成します(Moore et al., 2018)。この関節は線維軟骨性の関節円板を介して連結し、上肢の運動範囲を拡大させる重要な役割を担っています。
  5. 臨床的意義:肩甲棘は肩関節インピンジメント症候群(棘上筋腱や肩峰下滑液包が肩峰との間で圧迫される病態)や肩鎖関節脱臼・亜脱臼の診断・治療において重要なランドマークとなります(Matsen et al., 2006)。また、肩甲棘骨折は比較的稀ですが、外傷や反復性のストレスにより発生することがあります(Kim et al., 2013)。

参考文献

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J0161 (右肩甲骨:後方からの図)

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J0312 (右肩関節:後方からの図)

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J0313 (右肩関節:後方から前面断図)

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J0361 (上肢帯:右肩、内側に巻かれた上腕、軸光線は斜めに前方、背腹方向からのX線像)

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J0448 (広い背筋:背面図)

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J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

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J0468 (右上腕の筋:背面図)

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J0469 (右上腕の筋:背面図)

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J0470 (右上腕の筋(深層):背面図)