肩甲棘 Spina scapulae

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J0161 (右肩甲骨:後方からの図)

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J0312 (右肩関節:後方からの図)

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J0313 (右肩関節:後方から前面断図)

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J0361 (上肢帯:右肩、内側に巻かれた上腕、軸光線は斜めに前方、背腹方向からのX線像)

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J0448 (広い背筋:背面図)

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J0449 (広い背中の筋(第2層):背面図)

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J0468 (右上腕の筋:背面図)

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J0469 (右上腕の筋:背面図)

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J0470 (右上腕の筋(深層):背面図)

解剖学的構造

基本的特徴

肩甲棘は肩甲骨の背面に存在する顕著な骨性隆起であり、肩甲骨後面の形態学的特徴を規定する最も重要な構造物です(Standring, 2016)。この三角形状の扁平な骨性突起は、肩甲骨の後面を横断して内側から外側へ斜めに走行し、肩甲骨背面を上棘窩(supraspinous fossa)と下棘窩(infraspinous fossa)の二つの窩に明確に分割しています。

形態学的詳細

肩甲棘の起始部は肩甲骨内側縁の上部約3分の1の高さに位置し、比較的平坦で幅の狭い構造として始まります。そこから外側に向かって徐々に高さと幅を増しながら延長し、肩甲骨外側角付近で最大の高さに達します(Netter, 2019)。肩甲棘の高さは内側で約3-5mm程度ですが、外側では15-20mmに達することもあります(Drake et al., 2020)。

肩甲棘には以下の三つの縁が識別されます:

肩峰との連続性

肩甲棘の外側端は拡大・扁平化して肩峰(acromion)を形成します。肩峰は肩甲棘の自然な延長として、より水平な方向に突出し、肩関節の上方を覆う「屋根」として機能します(Moore et al., 2018)。肩峰の内側面には楕円形の小さな関節面(肩鎖関節面、facies articularis acromialis)が存在し、鎖骨外側端の鎖骨肩峰端と肩鎖関節(acromioclavicular joint)を形成します。この関節は線維軟骨性の関節円板を介して連結される滑膜関節であり、上肢の運動範囲を拡大させる重要な役割を担っています(Standring, 2016)。

上棘窩と下棘窩

**上棘窩(supraspinous fossa)**は肩甲棘の上方に位置する比較的小さな窩で、棘上筋(supraspinatus muscle)の起始部を収容します。この窩は内側では深く、外側に向かって浅くなります。

**下棘窩(infraspinous fossa)**は肩甲棘の下方に位置するより広大な窩で、棘下筋(infraspinatus muscle)と小円筋(teres minor muscle)の起始部を収容します。下棘窩は上棘窩の約3倍の表面積を有しており、これは棘下筋の筋容積が棘上筋よりも大きいことを反映しています(Drake et al., 2020)。

筋の付着部位と機能的解剖

僧帽筋(Trapezius muscle)

僧帽筋は肩甲棘の上縁の全長にわたって広く付着する表層筋です(Drake et al., 2020)。特に僧帽筋の中部線維は肩甲棘上縁と肩峰の上縁に強固に付着し、肩甲骨の内転(retraction)と上方回旋を制御します。僧帽筋の下部線維は肩甲棘の内側部に付着し、肩甲骨の下制と上方回旋に寄与します。僧帽筋は副神経(accessory nerve, CN XI)と頸神経叢の枝によって支配されます。

三角筋(Deltoid muscle)