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図527(右側の迷走神経と交感神経の頚部、胸腔、および腹腔上部における分枝)
迷走神経は当初から混合性である。その起始核Ursprungskerneについては上記424頁を参照されたい。迷走神経は延髄の後外側溝において10~15本の根束をもって表面に現れる。これらの根束が集まって形成する扁平な神経幹は小脳の片葉の下を通り、頚静脈孔の前方部—すなわちこの孔の神経部Nervenabteilung—に達する。ここで迷走神経は副神経とともに1つの共通硬膜鞘に包まれ、この鞘が迷走神経と舌咽神経とを隔てる。頚静脈孔の入口付近で、これらの根束は1つの比較的大きな神経節に入る。これが頚静脈神経節Ganglion jugulareであり、脊髄神経節に相当し、迷走神経の知覚性線維の大部分の起始核となっている。
頚静脈孔を出た後、迷走神経は副神経の内側枝をその幹に受け入れる。次いで膨らみ、細長く伸びた節状神経節Ganglion nodosumとなる。この神経節もまた偽単極の神経細胞を有している。節状神経節では、迷走神経の多くの枝(例えば上喉頭神経、咽頭枝など)は単にこの神経節に接して通過するだけである。
節状神経節に接して、あるいはその内部に、または頚静脈上球に接して、クロム染色で染まらない若干のパラガングリオンParaganglienが存在する。これに対してWatzka(Z. Zellforsch., 36. Bd., 1951)はParaganglion nodosum(節状パラガングリオン)という名称を提唱した。
局所解剖:頚静脈孔の下方では、迷走神経は内頚静脈の前方、舌下神経の外側に位置する。舌下神経は次いで節状神経節の後面に接しつつ迷走神経の外側面へ移行する。迷走神経はここで内頚動脈(さらに下方では総頚動脈)と内頚静脈との間の溝内にあり、交感神経幹の前方を下行する。右側のものは右鎖骨下動脈の前方を、左側のものは左鎖骨下動脈の前方を通って胸腔に入る。胸腔内では左の迷走神経は大動脈弓の前方またはその左側面上に位置する。胸腔内では左右の迷走神経はそれぞれの側の気管支後壁に接し、次いで食道に沿って走行し、多くの枝を出しながら細くなって腹腔に入る。
迷走神経は全体として生理学的に次のような種類の線維を含む:1. 喉頭・咽頭・食道および胃・腸上部への運動性線維、2. 甲状腺(?)・胃腺・膵臓・腎臓への分泌性線維、3. 心臓への抑制神経線維、4. 血管神経、5. 知覚性線維。
迷走神経の広範な分布領域Verbreitungsgebietに従い、この神経の幹とそこから出る枝を頭部・頚部・胸部および腹部に分けて述べる。
a) 迷走神経の頭部Kopfteil des Vagusは延髄から出るところから節状神経節の上端まで。この部分には次のものがある:
b) 迷走神経の頚部は節状神経節から下喉頭神経の出るところまでである。
節状神経節は細い枝を次のものに送っている:
α. 交感神経幹の上頚神経節に行くもの。これは上頚神経節との下交通枝R. communicans inferior cum ganglio cervicali cranialiと呼ばれる。
β. 舌下神経に至る枝。これは舌下神経との交通枝Rami communicantes cum nervo hypoglossoである。
[図524] 交感神経幹上部・舌咽神経・迷走神経・副神経・舌下神経(1/2)(HirschfeldとLeveilléによる)
[図525] 頚部の神経(3/4)(HirschfeldとLeveilléによる)
胸鎖乳突筋は上部を除いて広頚筋とともに取り除かれ、胸骨柄の右半分と鎖骨の胸骨端も切除されている。
[図526]喉頭神経の分枝(3/4)