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三叉神経の第2枝である上顎神経は、正円孔を通って翼口蓋窩に達し、下眼窩裂を経て眼窩底に至り、上顎骨の眼窩下管に入る。
頭蓋腔内にある間に、1〜2本の細い硬膜枝(Ramus meningeus)を硬膜に送り出す。これらの枝は中硬膜動脈の前枝の分布領域に広がり、三叉神経第3枝の硬膜枝と結合する。
上顎神経が頭蓋腔外で出す枝(äußere Äste)は以下の3つである:頬骨神経(N. zygomaticus)、眼窩下神経(N. infraorbitalis)、翼口蓋神経(Nn. pterygopalatini)。
図517(**下顎神経の分枝:**外側から描写。また、顔面に分布する眼神経と上顎神経の枝も示す)
a) 後上歯槽枝Rami alveolares maxillares posteriores(図514(上顎神経の分枝) 、図515(上顎神経と翼口蓋神経節) )は通常2本あり、眼窩下神経が眼窩に入る前に幹から分かれ、同名動脈に伴って上顎結節付近を下行する。後方の1枝はその線維の一部が上顎骨外面(Außenwand)にとどまり、大臼歯領域の歯肉と隣接する頬粘膜に分布する。他の枝は歯槽孔を通って上顎洞の後外側壁に達する。ここで骨壁の不完全な管内を前方に走り、中上歯槽枝と神経叢を形成して結合し、細枝を上顎洞粘膜に出し、また上歯枝(Rami dentales maxillares)を3本の大臼歯に送る。
b) 中上歯槽枝Ramus alveolaris maxillaris medius(図515(上顎神経と翼口蓋神経節) )は眼窩下溝内で眼窩下神経から分かれ、まず特別な小管内を走り、次いで上顎洞外側壁の溝内を下行する。後方は後上歯槽枝と、前方は前上歯槽枝と結合する枝を出し、その先は細枝に分かれて2本の小臼歯とその歯肉に終わる。
c) 前上歯槽枝Ramus alveolaris maxillaris anterior(図515(上顎神経と翼口蓋神経節) )は眼窩下孔付近で眼窩下神経から分かれ、上顎洞前壁の特別な小管を通って歯槽縁に進む。ここで前上歯槽枝は1本の鼻枝Ramus nasalisを鼻腔へ出し、残りが歯枝Rami dentalesとなり、上顎の犬歯と切歯に至る。
鼻枝Ramus nasalisは特別な小管を通って鼻腔底前方部の粘膜に達する。鼻枝は鼻口蓋神経N. nasopalatinusと吻合する(翼口蓋神経節 Ganglion pterygopalatinum )。
歯枝Rami dentalesは互いに結合して上歯神経叢Plexus dentalis maxillarisを形成し、この神経叢は凸側を下方に向ける。上歯神経叢からは上顎の歯槽と歯への神経が出ており、これが上歯枝Rami dentales maxillaresと上歯肉枝Rami gingivales maxillaresである(図515(上顎神経と翼口蓋神経節) )。
d) 眼窩下管から出た後、眼窩下神経はその終枝に分かれ、これらの枝が顔面神経と結合する。その枝は次の通りである:
α) 下眼瞼枝Rr. palpebrales inferioresは多くの場合、内側枝と外側枝が1本ずつ存在する。これらの両枝は眼輪筋の下縁を回って下眼瞼に分布する。
β) 外鼻枝と内鼻枝Rr. nasales externi et interniは2〜3本あり、鼻側壁の皮膚、鼻翼および外鼻孔の皮膚に分布する。
γ) 上唇枝Rr. labiales maxillaresは3〜4本あり、まず骨と筋肉の間を下方に走り、上唇の皮膚と粘膜に達し、口角にまで及ぶ(図514(上顎神経の分枝) )。