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図520(顔面神経の骨管内走行とその結合関係を外側から剖出した図)
翼口蓋窩にある副交感神経性の翼口蓋神経節は、毛様体神経節の2~3倍の大きさがあり、次の3根と結合している。それは知覚根(翼口蓋神経)、運動根(大浅錐体神経)、および交感根(深錐体神経)である。後2者は合して翼突管神経N. canalis pterygoideiとなり、この神経節に入る。翼口蓋神経節には多極神経細胞が集まっている。この神経節から次の枝が出る:1. 外側および中隔後鼻枝Rr. nasales posteriores laterales et septi、2. 口蓋神経Nn. palatini、3. 眼窩枝Rami orbitales。
a) 翼口蓋神経節の根
α) 知覚性の翼口蓋神経Nn. pterygopalatini:その線維の一部はこの神経節のすぐそばを通過し、他の一部はこれを貫く。両者はこの神経節から起こる線維とともに、口蓋神経と後鼻枝の中を走って軟口蓋と硬口蓋に達し、また鼻腔の広範囲の粘膜に分布する。
β) 大浅錐体神経N. petrosus superficialis major(図514(上顎神経の分枝)、図515(上顎神経と翼口蓋神経節)、図516(翼口蓋神経節の根と枝)、図520(顔面神経の骨管内走行とその結合関係を外側から剖出した図)):顔面神経の膝神経節に始まり、顔面神経管裂孔から出て、大浅錐体神経溝を通り蝶骨錐体軟骨結合に達する。頚動脈管内口の外側でこの軟骨結合を貫き、深錐体神経と合して翼突管を通って翼口蓋神経節に達する。この神経は顔面神経からの副交感線維を含み、また翼口蓋神経から来て顔面神経の末梢部に移行する知覚性の線維も含むと考えられる(顔面神経および伝導路の項参照)。
γ) 深錐体神経N. petrosus profundus(図514(上顎神経の分枝)、図515(上顎神経と翼口蓋神経節)、図516(翼口蓋神経節の根と枝)):交感性の内頚動脈神経N. caroticus internusの外側枝から出て蝶骨錐体軟骨結合を貫通し翼突管に入る。ここで大浅錐体神経と合して翼突管神経N. canalis pterygoideiとなる。深錐体神経は上頚神経節と翼口蓋神経節とを結ぶ交感神経幹の一部といえる。
b) 翼口蓋神経節の枝
α) 外側後鼻枝Rr. nasales posteriores lateralesおよび中隔後鼻枝Rr. nasales posteriores septi: これらの枝は翼口蓋孔を通って鼻腔に入り、内側の枝と外側の枝に分かれる。内側の中隔後鼻枝は細い2~3本の神経で、その一部は鼻中隔の上部に分布する。これらの枝のうち1本は鼻口蓋神経N. nasopalatinusと呼ばれ、長い経路をとり、中隔の骨膜と粘膜の間を中隔後鼻動脈とともに前下方に進んで、切歯管に達する。
切歯管で両側の神経が合流し、細い枝を口蓋粘膜の前方部に出す。この神経は知覚性の線維を中隔の下部の粘膜に送る。切歯管に入る前にII. 上顎神経 N. maxillaris で述べたように前上歯槽枝の鼻枝Ramus nasalisと結合する。これらの神経の口蓋に分布する枝は大口蓋神経N. palatinus majorと結合する。
外側後鼻枝Rami nasales posteriores laterales(図516(翼口蓋神経節の根と枝))は6〜10本の繊細な枝からなる。これらは翼口蓋孔および翼口蓋管前壁の孔を通って鼻腔に入る。一部は篩骨の両鼻甲介後部、上鼻道、後篩骨洞の粘膜に分布し、他は後方へ走り咽頭円蓋に達して、後鼻孔上部、耳管咽頭口、蝶形骨洞の粘膜に分布する。
β)口蓋神経Nn. palatini(図516(翼口蓋神経節の根と枝))は3本あり、翼口蓋管とその2つの側管を通る。大口蓋神経N. palatinus majorは最も太く、翼口蓋管と大口蓋孔を経て硬口蓋Palatum durumに達する。ここで3〜4本に分かれ、口蓋溝内を前方へ走り、硬口蓋粘膜、口蓋腺、歯肉に分布する。切歯孔で鼻口蓋神経と吻合し、翼口蓋管内では**(下)外側後鼻枝Rami nasales posteriores laterales (inferiores)を下鼻甲介、中鼻道、下鼻道の粘膜へ送る。小口蓋神経N. palatinus minorは後方の小口蓋管と小口蓋孔を通り軟口蓋Palatum molleに達し、その下面粘膜に知覚枝を与える。中口蓋神経N. palatinus mediusは最も細く、小口蓋孔の外側孔を通って咽頭扁桃**付近に達する。
γ)眼窩枝Rami orbitalesは2〜3本の細枝で、下眼窩裂を通って眼窩に入り、眼窩篩骨管を経て蝶形骨篩骨縫合の小孔から後篩骨洞と蝶形骨洞の粘膜に達する。また、視神経鞘にも小枝を送る。
[図514] 上顎神経の分枝(HirschfeldおよびLeveilléによる).縮尺4/5
左眼窩の外側壁と上顎骨周囲の軟部組織の大部分を除去している。
[図515] 上顎神経と翼口蓋神経節(HirschfeldとLeveilléによる).縮尺2/3