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片山正輝

目次(V. 神経系)

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図512(眼窩の神経:上方から剖出した図)

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図513(眼窩の神経:外側から見た図)

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図514(上顎神経の分枝)

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図516(翼口蓋神経節の根と枝)

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図517(**下顎神経の分枝:**外側から描写。また、顔面に分布する眼神経と上顎神経の枝も示す)

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図519(頭部と頚部における皮神経の分布領域)

眼神経は三叉神経の枝で、3枝のうち最も細い。海綿静脈洞と外転神経の外側を通り、上眼窩裂に達する。ここで眼神経の上に滑車神経が位置する。

この神経は海綿静脈洞を通過する際、内頚動脈神経叢から細い線維束を受け取る。動眼神経・滑車神経・外転神経にそれぞれ1本の細枝を送り、これら3神経に知覚性線維を供給する。眼神経はまだ頭蓋腔内にある間に細い硬膜枝Ramus meningeusを出す。この枝は後方に向かい、すぐに滑車神経に接して進み、小脳天幕内で長く伸びた細枝となって広がる。上錐体静脈洞、横静脈洞、直静脈洞の壁に分布する。

上眼窩裂に入る直前、眼神経はその3終枝に分かれる:

それは

  1. 涙腺神経N. lacrimalis(図512(眼窩の神経:上方から剖出した図)図514(上顎神経の分枝))。この神経は眼窩の上外側縁に沿って進み、外側直筋の上を越えて涙腺の眼窩部に達し、涙腺の後方で上枝と下枝に分かれる。上枝は涙腺に細枝を与え、さらにこれを貫いて進み、粘膜、外眼角の皮膚、および上眼瞼内で分枝する。

下枝は眼窩の外側壁に沿って下方に走り、頬骨神経との交通枝Ramus communicans cum nervo zygomatico(図514(上顎神経の分枝) )によって三叉神経の第2枝(上顎神経)に属する頬骨神経と結合する。この吻合部の前方に凸を描く部分からは、涙腺神経と頬骨神経に由来する多数の細枝が発し、これらは涙腺に入る。

  1. 前頭神経N. frontalis(図512(眼窩の神経:上方から剖出した図)図513(眼窩の神経:外側から見た図)図517(**下顎神経の分枝:**外側から描写。また、顔面に分布する眼神経と上顎神経の枝も示す)図519(頭部と頚部における皮神経の分布領域) )。3終枝のうち最も太い前頭神経は、眼窩の天井および眼窩骨膜のすぐ下で、上眼瞼挙筋の上を前方に進む。眼窩の中央部より後方で内側に向かって走る細い滑車上神経N. supratrochlearisを出し、次いで内側枝Ramus medialisと外側枝Ramus lateralisに分かれる。

滑車上神経N. supratrochlearisは上斜筋の上縁に沿って進み、滑車の内側面で上下各1本の終枝に分かれる。

その上枝は滑車の上を越えて眼窩を出て、眼輪筋ならびに前頭筋を貫き、分枝して上眼瞼、鼻根およびこれに続く前頭部の皮膚に達して終わる。

下枝は滑車のところから下行し、常に鼻毛様体神経から出る滑車下神経と結合している。前方に凸を描いて吻合するこの弓状部からは、いくつかの細枝が発して内眼角の皮膚と結膜に向かう。

内側枝Ramus medialisは内側前頭切痕Incisura frontalis medialisを、外側枝Ramus lateralisは外側前頭切痕Incisura frontalis lateralisを通って前頭部に達する。これらの両神経は眼輪筋、皺眉筋および前頭筋を貫き、前頭部の皮膚内を頭頂部にまで広がる。また両神経はそれぞれ外側に向かって下行する1枝を上眼瞼の皮膚と結膜に与える。内側と外側の両前頭切痕のところで、前頭神経は前頭骨とその骨膜に枝を出している。

  1. 鼻毛様体神経N. nasociliaris(図512(眼窩の神経:上方から剖出した図)図513(眼窩の神経:外側から見た図)図516(翼口蓋神経節の根と枝)図517(**下顎神経の分枝:**外側から描写。また、顔面に分布する眼神経と上顎神経の枝も示す)図522(頭部表層の神経 II) )。この神経は動眼神経および外転神経とともに外側直筋の両起始束の間を通って眼窩に達する。そして視神経の上、上直筋の下を通って眼窩の内側壁に達する。眼窩頭蓋管の付近で滑車下神経N. infratrochlearisと前篩骨神経N. ethmoideus anteriorの2終枝に分かれる。この分岐前に毛様体神経節の長根Radix longa ganglii ciliaris(知覚性の根)、ならびに1~2本の長毛様体神経Nn. ciliares longiおよび後篩骨神経N. ethmoideus posteriorを出す。長毛様体神経は視神経の内側面に接して眼球に達し、後篩骨神経は翼口蓋神経節からの眼窩枝とともに眼窩篩骨管に達する。鼻毛様体神経の2終枝は次の経過をとる:

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図522(頭部表層の神経 II)

a) 滑車下神経N. infratrochlearisは上斜筋の下で眼窩の内側壁に接して前方に進み滑車に至り、各1本の上枝と下枝に分かれる。その上枝は滑車上神経と結合して、上眼瞼に達する。これが上眼瞼枝Ramus palpebralis superiorである。下枝、すなわち下眼瞼枝Ramus palpebralis inferiorは(もともと皮膚の一部である)涙嚢、また涙丘に分布し、さらに細枝を内眼角の皮膚へも送っている。

b) 前篩骨神経N. ethmoideus anteriorは眼窩頭蓋管を通って頭蓋腔に達し、硬膜に覆われて篩板の上を前方に進み、前方の1つの孔(前篩骨孔Foramen cribro-ethmoideum)を通って鼻腔に入る。ここで鼻腔の粘膜に行く内鼻枝Rami nasales interniと鼻の皮膚に行く外鼻枝Ramus nasalis externusに分かれる。

α) 内鼻枝Rami nasales interniには鼻中隔の粘膜の前方部に分布する中隔前鼻枝Rami nasales anteriores septiおよび外側前鼻枝Rami nasales anteriores lateralesがあり、後者は篩骨の上鼻甲介と中鼻甲介の前端のところを通り過ぎて鼻腔の外側壁の前方部の粘膜に広がる(図516(翼口蓋神経節の根と枝))。