








陰茎背神経は陰部神経(pudendal nerve)の末端枝であり、仙骨神経叢のS2-S4脊髄神経根から起源する(Gray and Williams, 2023)。この神経は骨盤底筋群を貫通した後、深会陰横筋(deep transverse perineal muscle)を通過し、尿生殖隔膜の上縁で陰茎背面に到達する(Moore et al., 2024)。
左右両側の陰茎背神経は、陰茎深筋膜(Buck's fascia)の深層を走行し、陰茎背動静脈と伴走しながら陰茎の背側表面に沿って平行に分布する(Standring, 2024)。各神経は陰茎海綿体(corpus cavernosum)の外側を走り、陰茎体部の全長にわたって多数の分枝を出しながら遠位方向へ進む(Anderson and Lee, 2024)。神経の直径は近位部で約2-3mm、遠位部で1-2mmであり、陰茎根部から亀頭まで約10-15cmの走行距離を持つ(Zhang et al., 2023)。
陰茎背神経の主要な分布領域は、亀頭(glans penis)、包皮(prepuce)、陰茎体部皮膚、および尿道粘膜の遠位部である(Standring, 2024)。神経は陰茎皮下組織および真皮層において、マイスナー小体(Meissner's corpuscles)、パチニ小体(Pacinian corpuscles)、自由神経終末を含む豊富な感覚受容器網を形成する(Zhang et al., 2023)。
特に亀頭冠状溝(coronal sulcus)周辺および包皮内板では、密な神経叢を形成し、1mm²あたり200-300本の神経線維が分布する高密度領域となっている(Anderson and Lee, 2024)。これらの神経終末は、触覚、圧覚、振動覚などの機械的刺激の受容に重要な役割を果たす(Moore et al., 2024)。電子顕微鏡研究により、有髄神経線維と無髄神経線維の比率は約3:7であることが明らかになっている(Zhang et al., 2023)。
陰茎背神経は主要な求心性知覚神経として、触覚、圧覚、痛覚、温度感覚の伝達を担う(Anderson and Lee, 2024)。これらの感覚情報は、仙骨神経叢を経由して脊髄後角に伝えられ、さらに視床を経て大脳皮質体性感覚野に投射される(Gray and Williams, 2023)。
勃起反射経路において、陰茎背神経は重要な求心性神経として機能する(Johnson et al., 2024)。性的刺激による陰茎への機械的刺激は、陰茎背神経を介して仙髄勃起中枢(S2-S4)に伝達され、副交感神経性の遠心性応答を惹起し、陰茎海綿体への血流増加と勃起を引き起こす(Anderson and Lee, 2024)。
また、陰茎背神経は感覚線維のみならず、交感神経性の血管運動線維(vasomotor fibers)を含んでおり、陰茎血管の収縮と弛緩の調節にも関与する(Johnson et al., 2024)。これらの自律神経線維は、陰茎動脈および海綿体動脈の平滑筋に分布し、局所的な血流調節に寄与している(Moore et al., 2024)。
陰茎背神経の損傷は、陰茎の感覚障害(hypoesthesia)、知覚異常(paresthesia)、性機能障害を引き起こす可能性がある(Smith and Brown, 2023)。神経損傷の主な原因として、骨盤骨折、会陰部外傷、前立腺全摘除術、膀胱全摘除術などの骨盤内手術が挙げられる(Kim and Park, 2024)。
前立腺癌に対する根治的前立腺全摘除術では、神経血管束(neurovascular bundle)の温存が性機能保持のために重要であり、陰茎背神経を含む陰部神経系の保護が術中の重要課題となる(Kim and Park, 2024)。神経温存手術(nerve-sparing surgery)の技術向上により、術後の勃起機能保持率は70-90%まで改善されている(Smith and Brown, 2023)。
また、包茎手術(circumcision)や陰茎の形成術においても、陰茎背神経の走行を正確に把握し、術中損傷を回避することが術後の感覚機能保持に不可欠である(Moore et al., 2024)。神経損傷による感覚障害は、患者のQOL(quality of life)に重大な影響を及ぼすため、細心の注意が必要である(Anderson and Lee, 2024)。
胎児期における陰茎背神経の発生は、妊娠8-12週に始まり、陰部神経から陰茎原基への神経線維の伸長により形成される(Wilson et al., 2024)。神経の走行パターンは妊娠16-20週までにほぼ確立され、その後、神経線維の成熟と髄鞘化が進行する(Gray and Williams, 2023)。
発生過程における神経走行の解剖学的変異は比較的高頻度に認められ、約15-20%の症例で左右の神経径に有意差が見られる(Wilson et al., 2024)。また、稀な先天異常として、陰茎背神経の欠損や異常走行が報告されており、これらは先天性感覚障害の原因となり得る(Standring, 2024)。
尿道下裂(hypospadias)などの先天性陰茎奇形では、陰茎背神経の走行異常を高率に伴うことが知られており、形成術の際には詳細な神経解剖の評価が必要である(Wilson et al., 2024)。