










J0876 (内耳神経の入口および顔面神経出口の高さ、8-9ヶ月胎児の脳幹の断面)

J0877 (外転神経核および顔面神経出口の高さ、8-9ヶ月胎児の脳幹の断面)
オリーブ(下オリーブ核による膨隆)は、延髄の外側面に位置する長卵円形の隆起である(Paxinos & Huang, 1995)。前オリーブ溝(anterior olivary sulcus)と後オリーブ溝(posterior olivary sulcus)の間に位置し、内側には錐体、外側には後外側溝が存在する(Naidich et al., 2009)。前オリーブ溝からは舌下神経(CN XII)が、後オリーブ溝からは舌咽神経(CN IX)、迷走神経(CN X)、副神経(CN XI)の延髄根が出現する。
オリーブの長軸は約1.2~1.5cmで、上端は錐体交叉の上端に、下端は延髄と脊髄の移行部近くに位置する(Watson et al., 2010)。矢状断面では、オリーブ核は延髄の腹外側部に位置し、第四脳室の外側に相当する。
下オリーブ核複合体(inferior olivary nuclear complex)は、主オリーブ核(principal inferior olivary nucleus)、内側副オリーブ核(medial accessory olivary nucleus)、背側副オリーブ核(dorsal accessory olivary nucleus)の3つの核群から構成される(Ruigrok, 2011)。主オリーブ核は最も大きく、灰白質が薄い襞状の層を形成し、内側に開口した袋状の構造を呈する(De Zeeuw et al., 1998)。この襞状構造は「歯状襞(folium dentatum)」とも呼ばれ、横断面ではジグザグ状の輪郭として認められる。
オリーブ核のニューロンは主に中型から大型の多極性細胞で構成され、細胞体の直径は約25~40μmである(Scheibel & Scheibel, 1978)。樹状突起は核の層に沿って配列し、広範な樹状突起場を形成する。ヒトの下オリーブ核には約50万個のニューロンが存在すると推定される(Kooy, 1917)。
下オリーブ核は、大脳皮質、赤核、中心灰白質、脊髄などから多彩な入力を受ける(Armstrong, 1990)。主要な入力経路は以下の通りである:
下オリーブ核からの出力は、ほぼ全てのニューロンが対側小脳皮質に投射する登上線維(climbing fiber)として伝達される(Sugihara et al., 2001)。登上線維は下小脳脚(inferior cerebellar peduncle)を経由し、小脳皮質のプルキンエ細胞(Purkinje cell)に強力な興奮性入力を与える。1本の登上線維は1個のプルキンエ細胞に対して300~500個のシナプスを形成し、きわめて強固な1対1の結合を構成する(Ito, 2006)。
オリーブ小脳投射には厳密な局在性(somatotopy)があり、下オリーブ核の各亜区分は特定の小脳領域に投射する(Apps & Hawkes, 2009)。この投射様式は、小脳の機能的モジュール構造(cerebellar modules)の基盤となる。
下オリーブ核は、運動の協調、タイミング制御、運動学習において中心的役割を果たす(De Zeeuw et al., 1998)。特に、予測できない外乱に対する適応的な運動調節や、視覚運動協調課題における誤差信号(error signal)の伝達に関与する(Ito, 2001)。登上線維の活動は「教師信号(teaching signal)」として機能し、小脳依存性の運動学習における長期抑圧(long-term depression, LTD)などの可塑性を誘導すると考えられている(Mauk et al., 1986)。