下肢の静脈 Venae membri inferioris

J0628 (右大腿静脈、腹側からの図)

J0629 (右大腿の深部静脈:背面図)

J0630 (右下肢の表在静脈:前面図)

J0631 (右大腿の表面静脈:前面からの図)

J0632 (右下腿の表面静脈、背面からの図)
下肢の静脈は深部・表在・穿通枝から構成され、筋ポンプと弁で血液を近位へ還流させる。深部静脈は足部から骨盤へ連続し、表在静脈は皮下を走り静脈瘤や炎症の対象となる。穿通枝は表在と深部を結び、一方向性弁が血流を制御する。臨床では静脈瘤、深部静脈血栓症(DVT)や肺血栓塞栓症(PE)などの診断・画像評価と治療が重要で、超音波が第一選択である。
1) 概要(静脈還流の基本)
- 下肢静脈は、深部静脈(deep veins)と表在静脈(superficial veins)、それらを連絡する**穿通枝(perforating veins)**から構成され、筋ポンプと静脈弁により重力に抗して近位へ血液を還流させる(Moore, Dalley & Agur, 2022)。
- 深部静脈は概ね動脈に伴行し、足部〜下腿〜大腿〜骨盤へ連続する。表在静脈は皮下で長距離を走り、臨床的に静脈瘤・静脈炎・カテーテル・バイパスグラフト採取などの対象となる(Standring, 2021)。
2) 深部静脈(深在静脈系)
2-1. 足部〜下腿
- 足背静脈弓(arcus venosus dorsalis pedis)から、内側で大伏在静脈(v. saphena magna)、外側で**小伏在静脈(v. saphena parva)**へ連続する(Standring, 2021)。
- 深部では、足底静脈叢から後脛骨静脈(vv. tibiales posteriores)、前方から**前脛骨静脈(vv. tibiales anteriores)が形成され、腓骨側で腓骨静脈(vv. fibulares)**が合流して近位へ向かう(Moore, Dalley & Agur, 2022)。
2-2. 膝窩〜大腿
- 下腿の深部静脈は**膝窩静脈(v. poplitea)**に集約し、膝窩動脈に伴行して膝窩窩を上行する。膝窩静脈は多くの個体で伴行静脈として複数本がみられうる(Standring, 2021)。
- 膝窩静脈は大腿内転筋裂孔(adductor hiatus)を通過して大腿静脈(v. femoralis)となる。大腿静脈は深大腿静脈(v. profunda femoris)、**大伏在静脈の合流(saphenofemoral junction)などを受け、鼠径靱帯の深層で外腸骨静脈(v. iliaca externa)**へ連続する(Moore, Dalley & Agur, 2022)。
2-3. 骨盤
- 外腸骨静脈は、内腸骨静脈と合流して**総腸骨静脈(v. iliaca communis)となり、左右の総腸骨静脈が合流して下大静脈(v. cava inferior)**へ至る(Standring, 2021)。
- 左総腸骨静脈が右総腸骨動脈により圧排されやすい解剖学的配置は、May-Thurner 症候群(左腸骨静脈圧迫症候群)と関連する(Harrison et al., 2018)。
3) 表在静脈(皮下静脈系)
3-1. 大伏在静脈(GSV)
- **大伏在静脈(v. saphena magna)は足背静脈弓の内側から起こり、内果前方を通って下腿内側〜大腿内側を上行し、鼠径部の伏在裂孔(saphenous opening)**で大腿静脈へ注ぐ(Standring, 2021)。
- 走行の途中で多数の皮下枝・穿通枝を受け、逆流が生じると静脈瘤の主要な病態となる(Moore, Dalley & Agur, 2022)。