心臓 Cor
心臓は、循環器系の中枢を担う、生命維持に不可欠な器官です(Gray and Carter, 2021)。以下に、解剖学的および臨床的な特徴を詳述します。
1. 解剖学的特徴
1.1 位置と形態
- 縦隔の前下部に位置し、第2肋間から第6肋骨レベルまで及びます(Netter, 2023)。
- 成人の心臓の長さは約12cmで、幅は約9cmです(Standring, 2021)。
- 重量は、成人男性で約250-300g、成人女性で約200-250gです(Moore et al., 2022)。
- 心尖部は、第5肋間腔の左中鎖骨線上に位置します。
1.2 構造
- 心外膜、心筋層、心内膜の3層構造を有します(Standring, 2021)。
- 心外膜は漿膜性の二重膜で、心嚢液を含みます(Sinnatamby, 2020)。
- 心筋層は、特殊な横紋筋で構成され、不随意的に収縮します。
- 心内膜は心腔内面を覆う内皮細胞層です(Drake et al., 2019)。
- 刺激伝導系
- 洞結節:右心房上部に位置し、心臓の自動性を担います(Guyton and Hall, 2021)。
- 房室結節:心房と心室の間に位置し、刺激伝導の遅延を担います。
- His束とPurkinje線維:心室内の刺激伝導を担います。
2. 機能的特徴
2.1 血液循環
- 右心系:静脈血を肺循環へと送り出します(肺循環)(Guyton and Hall, 2021)。
- 右心房と右心室からなり、体循環からの静脈血を受け取ります。
- 肺動脈を通じて静脈血を肺へ送り、酸素化されます。
- 左心系:酸素化された血液を全身へと送り出します(体循環)。
- 左心房と左心室からなり、肺からの酸素化された血液を受け取ります。
- 大動脈を通じて動脈血を全身へ送ります。
2.2 弁膜装置
- 房室弁
- 三尖弁:右心房と右心室間に位置し、血液逆流を防止します(Katz, 2019)。
- 僧帽弁(二尖弁):左心房と左心室間に位置し、血液逆流を防止します。
- 半月弁
- 肺動脈弁:右心室と肺動脈間に位置し、血液逆流を防止します。
- 大動脈弁:左心室と大動脈間に位置し、血液逆流を防止します。
3. 臨床的意義
3.1 主要な病態
- 虚血性心疾患
- 冠動脈の血流障害により、心筋への酸素供給が不足します(Kumar et al., 2023)。
- 狭心症や心筋梗塞などの病態を引き起こします(Jameson et al., 2022)。
- 弁膜症
- 弁の機能不全により、血行動態に異常をきたします。
- 弁狭窄や弁閉鎖不全などがあります(Otto and Bonow, 2020)。
- 不整脈
- 刺激伝導系の障害により、心リズムが乱れます。
- 心房細動、心室頻拍、心室細動などがあります(Zipes et al., 2019)。