輪状軟骨 Cartilago cricoidea

J0421 (舌骨筋(深層):前面図)

J0558 (喉頭と舌の動脈:右側からの図)

J0639 (頭頚部の正中矢状断:左側からの右半分の図)

J0684 (咽頭の筋、右側からの図)

J0729 (甲状軟骨と輪状軟骨:右方からの図)

J0730 (甲状軟骨と輪状軟骨:前方からの図)

J0731 (輪状軟骨:後方からの図)

J0732 (輪状軟骨:右側からの図)

J0738 (喉頭筋:右側からの図)

J0739 (内側の喉頭筋:右側からの図)
輪状軟骨(cricoid cartilage)は喉頭軟骨の中で唯一完全なリング状構造を持ち、喉頭の構造的基盤として機能する硝子軟骨である(Standring, 2020)。第6頸椎レベルに位置し、気道の開存性維持と喉頭機能の支持において中心的役割を果たす(Gray and Drake, 2019)。
1. 解剖学的構造
1.1 形態学的特徴
輪状軟骨は印章指輪(signet ring)に類似した形状を呈し、以下の2つの主要部分から構成される:
- 輪状軟骨板(lamina of cricoid cartilage):後方の幅広く垂直な板状構造で、高さは約20-30mm。正中部が最も厚く、左右の披裂軟骨との関節面(articular facets)を上縁外側に有する(Netter, 2018; Reidenbach, 2015)。
- 輪状軟骨弓(arch of cricoid cartilage):前方および側方の狭い弓状部分で、高さは約5-7mm。気管の第1気管輪と連続する(Gray and Drake, 2019)。
1.2 関節構造
輪状軟骨は2種類の滑膜関節を形成する:
- 輪状甲状関節(cricothyroid joint):輪状軟骨の外側面と甲状軟骨下角の間に形成される。この関節により甲状軟骨が前後軸を中心に回転し、声帯の緊張度を調節する(Sataloff, 2017; Sulica and Blitzer, 2021)。
- 輪状披裂関節(cricoarytenoid joint):輪状軟骨板上縁外側の関節面と披裂軟骨底面の間に形成される。この関節により披裂軟骨が回転・滑走・傾斜運動を行い、声門の開閉と声帯の内転・外転を可能にする(Hunter et al., 2020)。
1.3 組織学的特徴
輪状軟骨は主に硝子軟骨(hyaline cartilage)で構成され、軟骨膜(perichondrium)に覆われている。組織学的には以下の特徴を示す:
- 軟骨細胞は軟骨小腔内に存在し、豊富な細胞外基質(主にII型コラーゲンとプロテオグリカン)に囲まれている(Hirano et al., 2016)。
- 加齢変化:20歳代から石灰化が始まり、40歳以降は骨化(endochondral ossification)が進行する。女性では骨化の程度が男性より軽度である(Claassen et al., 2015; Turk and Hogg, 2019)。
- 弾性線維は軟骨膜と軟骨表層に分布し、機械的ストレスへの抵抗性を付与する(Kurita et al., 2017)。
2. 解剖学的位置関係
2.1 垂直的位置
- 椎骨レベル:輪状軟骨の下縁は第6頸椎(C6)または第7頸椎(C7)レベルに位置する。これは臨床的に重要な解剖学的ランドマークである(Standring, 2020)。