大腸 Intestinum crassum

1. 解剖学的概要

大腸は消化管の最終部分で、回盲弁から肛門までを指します(Moore et al., 2018)。解剖学的には、回腸末端から連続し、右腸骨窩から始まり、腹腔内で逆U字形をなす消化管です。日本人の場合、男性の平均大腸の長さは161cm、女性は158cmです(村上, 2000)。大腸は構造的に盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、直腸に区分されます。臨床的には、これらの区分は内視鏡検査や手術時の位置決めに重要です(Standring, 2021)。

2. 小腸との解剖学的・組織学的差異

小腸と大腸(結腸)の解剖学的・組織学的差異は以下の通りです(Ross and Pawlina, 2016):

3. 生理学的機能

生理学的機能として、小腸で消化・吸収された食物残渣は半流動状態で回腸から盲腸に入ります(Hall, 2021)。大腸では主に水分(1日約1.5L)と電解質(特にナトリウムとカリウム)が吸収され、腸内細菌による発酵も行われます。また、結腸粘膜から分泌される粘液が混合され固形の糞便が形成されます。蠕動運動により糞便は肛門側へ運ばれ、通常はS状結腸から直腸S状部移行部(直腸膨大部の手前)に一時的に貯留されます(Barrett et al., 2019)。臨床的には、この部位より口側での腫瘍性閉塞は慢性的な症状を呈することが多く、より肛門側での閉塞は急性症状を呈することがあります。大腸は解剖学的には盲腸から肛門管までの全区間を指します(Gray and Standring, 2016)。

4. 参考文献