伏在裂孔 Hiatus saphenus

J0435 (腹筋:右側前方からの図)

J0436 (腹筋、正面からの図)

J0444 (男性右外側の鼡径輪と卵円窩)

J0494 (右大腿の筋膜:腹側からの図)

J0631 (右大腿の表面静脈:前面からの図)

J0959 (右大腿の皮神経:前面からの図)
伏在裂孔は大腿部の血管系と筋膜構造における重要な解剖学的構造です。その詳細な特徴と臨床的意義は以下の通りです(Moore et al., 2018; Standring, 2020):
解剖学的特徴
- 卵円窩(Fossa ovalis)とも呼ばれ、大腿三角の内側部に位置する筋膜開口部である(Drake et al., 2019)
- 大腿の前面上部、具体的には鼡径靭帯から約3〜4cm下方に位置し、大腿筋膜の欠損部を形成する
- 鼡径靭帯の内側端の直下に位置し、大腿三角の内側境界の一部を構成する
- 大伏在静脈が表層から大腿深部へ移行し、大腿静脈に合流する際の通過路となる(Loukas et al., 2016)
- 周縁を形成する大腿筋膜は内側に向かって肥厚し、特徴的なC字形または三日月形を呈する
- 上外側部を上角(superior cornu)、下内側部を下角(inferior cornu)と呼び、その中間の外側縁は鎌状縁(falciform margin、またはsickle-shaped edge)と称される(Netter, 2019)
- 内側部では、大腿筋膜が深層の恥骨筋膜(fascia pectinea)に移行し、裂孔の床を形成する
- 床部分は複数のリンパ管や小血管によって貫かれ、網状構造を示すため、篩状筋膜(fascia cribrosa)と呼ばれる
伏在裂孔の平均サイズは成人で約2.5×1.5cmであり、個人差がある。縦長の楕円形を呈し、長軸は下内側に向かって斜めに配置されている(Agur and Dalley, 2017)。
臨床的意義
- 大腿ヘルニア(femoral hernia)の脱出部位となることがあり、腹腔内容物が大腿管を通過して伏在裂孔から皮下に脱出する(Kingsnorth and LeBlanc, 2006)
- 下肢の静脈瘤の発生と関連し、大伏在静脈の弁不全が伏在裂孔レベルから始まることが多い(Bergan, 2007)
- 大伏在静脈の結紮手術(高位結紮術)を行う際の重要な指標となる(Gloviczki and Dalsing, 2017)
- 大腿部の表在リンパ節(特にローゼンミュラーリンパ節)が伏在裂孔付近に存在し、下肢や外陰部の感染症による腫脹が観察される場所である(Ilahi et al., 2012)
- 血管外科的アプローチにおいて、大腿動静脈へのアクセスルートとして利用される(Rutherford, 2010)
伏在裂孔は、大腿部における血管やリンパ管の通過路として解剖学的に重要であるだけでなく、様々な臨床的状況において診断や治療の鍵となる構造です。特に下肢の静脈疾患や鼡径部・大腿部のヘルニア診断において詳細な理解が求められます。