背側骨間筋 Musculi interossei dorsales manus
背側骨間筋は、手の精密な運動制御を担う重要な深層筋群です。解剖学的構造と臨床的意義について詳細に解説します (Gray, 2020; Moore et al., 2018)。

J0206 (右の手骨:および筋の起こる所と着く所を示すの背面からの図)

J0480 (右手の背面)

J0484 (右の母指球の深筋)

J0486 **(**右手の掌側骨間筋)

J0487 (右手の背側骨間筋)
解剖学的特徴
- 構成:4対(合計8つの頭部)の羽状筋で、各筋は二頭性(二つの起始部を持つ)(Standring, 2021)
- 位置:中手骨間の背側に配置され、手背から観察可能
- 起始:隣接する中手骨の対向面(各筋は二つの中手骨から起始)
- 第1背側骨間筋:第1,2中手骨
- 第2背側骨間筋:第2,3中手骨
- 第3背側骨間筋:第3,4中手骨
- 第4背側骨間筋:第4,5中手骨
- 停止:
- 第1背側骨間筋:示指基節骨底の橈側と指背腱膜
- 第2背側骨間筋:中指基節骨底の橈側と指背腱膜
- 第3背側骨間筋:中指基節骨底の尺側と指背腱膜
- 第4背側骨間筋:薬指基節骨底の尺側と指背腱膜
- 支配神経:尺骨神経深枝(C8, T1)(Netter, 2019)
- 血液供給:深掌動脈弓および背側中手動脈 (Tubbs et al., 2016)
機能
- 主作用:中指を軸とした指の外転(DAB = Dorsal ABduct)(Neumann, 2017)
- 第1・第2背側骨間筋:示指と中指を橈側(親指側)へ外転
- 第3・第4背側骨間筋:中指と薬指を尺側(小指側)へ外転
- 補助作用:
- 基節骨の屈曲
- 中節骨・末節骨の伸展(指背腱膜を介して)
- 手の把握力強化と安定化
臨床的意義
- 尺骨神経障害:
- 「鷲手変形」の一因として、背側骨間筋の萎縮が生じる (Spinner and Amadio, 2015)
- 指の外転運動障害(試験法:紙を指の間に挟んで引き抜こうとする際の抵抗力低下)
- 第一背側骨間筋の萎縮は視診で確認可能(第1・2中手骨間の陥凹)
- Froment徴候:示指と拇指での紙挟み動作時、拇指の遠位関節が代償性に過屈曲する現象 (Froment, 1915)
- 手の筋力低下:繊細な手作業や道具操作の困難
- 外傷・手術リスク:手の背側アプローチ時に損傷リスクあり (Calfee et al., 2018)
解剖学的ニーモニック
「PAD/DAB」:Palmar ADduct(掌側骨間筋は内転)/ Dorsal ABduct(背側骨間筋は外転)(Doyle and Botte, 2010)