深指屈筋

深指屈筋は、前腕の深層に位置する筋肉で、以下のような特徴を持ちます:

変異として、橈骨近位部から筋肉が起始することがあります(成人で33%、胎児で16%)。また、第2指腱の筋腹は他の指腱の筋腹よりも分離しやすく、独立した例も報告されています。

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J0183 (右前腕骨:筋の起こる所と着く所:回外位の手掌側からの図)

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J0184 (右前腕骨:筋の起こる所と着く所:回外位の手の裏側からの図)

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J0205 (右の手骨:筋の起こる所と着く所を示す手掌側からの図)

日本人のからだ(本間敏彦 2000)によると

深指屈筋は尺骨(近位の2/3)、骨間膜、前腕筋膜から広範囲に起始します。この大きな筋肉は尺骨の前内側面を覆い、浅指屈筋の滑走面を形成します。4つの腱は手根管内で並び、浅指屈筋の腱を通じて、第2から第5指の末節骨底に到達します。起始部の変異として、橈骨近位部から筋肉が起始することが観察されます(成人で33%、井上、1934年;胎児で16%、石見、1951年)。深指屈筋の筋腹はほぼ一つの塊を形成し、手根部で4つの腱に分かれ、末節につき、指を曲げる働きがあります。これらの指の中で、最も可動性があるのは第2指で、この可動性と関連して、第2指腱の筋腹は他の指腱の筋腹よりも分離しやすく、さらに独立する例も報告されています(石見、1951年;竹内・野田、1962年)。

深指屈筋・長母指屈筋の副頭(Gantzerの筋)

上腕骨内側上顆から尺骨鈎状突起に至るまでの間に、浅指屈筋と共に起始し、深指屈筋または長母指屈筋と合する筋束が現れることがあります。これはGantzerの筋(深指屈筋の副頭または長母指屈筋の副頭)と呼ばれています(Gantzer, 1813)。長母指屈筋副頭の出現頻度は55-71%であり、深指屈筋副頭の20-30%よりも高いと報告されています(Adachi, 1909/1910; 工藤・尾畑, 1957; Morimoto et al., 1993 b)。この筋は出現頻度が高く、浅指屈筋と深層の深指屈筋、長母指屈筋とを結ぶ形態的特徴があり、比較解剖学的にも関心が寄せられ、筋の由来についての研究が行われています。支配神経の詳細な研究によれば、この筋は浅指屈筋の第2指近位筋腹と深層の深指屈筋と密接な関連があることが明らかになっています(本間,1981; 山田,1986; 木田,1988)。