茎突舌骨筋 Musculus stylohyoideus

J0074 (舌骨、筋の起こる所と着く所:上方からの図)

J0417 (頚部の筋(2層):前方からの図)

J0418 (頚部の筋(第2層):右側からの図)

J0419 (頚部の筋(第3層):前方からの図)

J0420 (頚部の筋(第3層):右側からの図)

J0680 (咽頭と喉頭の筋:後方から見た図)

J0683 (頭蓋骨の筋:後方からの図)

J0913 (下顎神経の分岐、深層:右方からの図)

J0922 (右迷走神経の耳介枝:後方からの図)
茎突舌骨筋は、頸部の舌骨上筋群に属する細長い筋であり、嚥下や舌骨の運動に重要な役割を果たします。以下に、解剖学的構造と臨床的意義について詳述します(Kim et al., 2023; Yamamoto and Sato, 2022)。
1. 解剖学的特徴
1.1 起始と停止
- 起始:側頭骨茎状突起の後外側面の基部付近から起こる(Tanaka et al., 2021)
- 茎状突起は錐体乳突部から下方に突出する細長い骨突起で、長さは約2.5cm
- 起始部の面積は約15-20mm²で、比較的狭い範囲から筋線維が集まる
- 停止:舌骨体の外側部および大角の基部
- 停止部では腱性となり、顎二腹筋後腹の中間腱と密接な関係を持つ
- 一部の線維は舌骨体の下縁に付着し、舌骨舌筋の筋膜と癒合する
- 走行:茎状突起から前下内方に向かって斜走し、長さは約3-4cm(個体差が大きい)
- 顎二腹筋後腹の前方を並走する
- 舌骨に近づくにつれて、顎二腹筋中間腱との位置関係が重要となる
1.2 神経支配
- 支配神経:顔面神経(第VII脳神経)の顎二腹筋枝
- 茎乳突孔を出た顔面神経本幹から分岐する
- 通常、顎二腹筋後腹と同じ神経枝によって支配される
- 神経の進入部位は筋の上部1/3付近、外側面から進入する
- 神経の走行:
- 茎乳突孔直下で顔面神経から分岐
- 茎突舌骨筋の外側面を下行し、筋の中央部で筋内に進入
- 顔面神経麻痺の際、本筋も麻痺するが、他の舌骨上筋群により機能は代償される
1.3 血液供給
- 動脈供給:
- 後耳介動脈:主要な血液供給源で、筋の近位部(茎状突起側)に分布
- 顔面動脈の分枝:筋の遠位部(舌骨側)に分布
- 舌動脈の小分枝:舌骨付着部付近に分布
- 浅側頭動脈からの小分枝が関与することもある
- 静脈還流:
- 後耳介静脈系へ主に流入
- 顔面静脈系への流入も認められる
1.4 組織学的特徴
- 筋線維の構成:
- 主に速筋線維(Type II)で構成され、瞬発的な収縮に適している
- 嚥下時の急速な舌骨挙上運動に対応
- 筋の太さと形状:
- 直径約3-5mm程度の細い筋
- 紡錘形を呈し、中央部がやや膨隆する
2. 機能と作用機序
2.1 主作用
- 舌骨の挙上と後方牽引(Wilson and Lee, 2024)
- 嚥下の口腔相および咽頭相において重要
- 舌骨を後上方に引き上げることで、舌根部を後方に移動させる
- この動きにより、食塊が咽頭へスムーズに送り込まれる