大腿骨頚 Collum femoris

J0228 (右の大腿骨:前方からの図)

J0229 (右の大腿骨:後方からの図)

J0230 (右大腿骨、内側からの図)

J0235 (右の大腿骨、近位端部:前方からの図)
解剖学的特徴
基本構造
大腿骨頚は大腿骨頭と大腿骨体を連結する円柱状の部分で、以下の解剖学的特徴を持ちます(Gray, 2020; 金子ら, 2018):
- 形態:大腿骨頭の基部から始まり、下外側方へ斜めに走行する円柱状の構造
- 断面形状:前後に扁平(前後径より横径が大きい)で、基部から遠位へ向かうにつれて幅が増大
- 長さ:約3〜4cm(個人差あり)
- 境界:
- 上内側:大腿骨頭との連続部
- 下外側:転子間線(前面)および転子間稜(後面)で大腿骨体と区分
角度と方向
- 頚体角(傾斜角):大腿骨頚の長軸と大腿骨体の長軸がなす角度(Standring, 2021)
- 成人:約125〜130°(平均127°)
- 新生児:約150°(ほぼ直線的)
- 高齢者:約120°(徐々に減少傾向)
- 性差:女性は男性より約2〜3°小さい傾向
- 前捻角:大腿骨頚の長軸と大腿骨顆の横軸がなす角度(Moore et al., 2018)
- 成人:約10〜15°前方へ捻転
- 新生児:約30〜40°
- この角度により大腿骨頭が寛骨臼内に適切に収まる
骨梁構造
大腿骨頚部の内部には、荷重伝達に特化した骨梁系が発達しています(Singh et al., 1970):
- 主骨梁群:
- 内側骨梁群(圧迫骨梁):大腿骨頭から内側皮質へ向かう扇状の骨梁
- 外側骨梁群(張力骨梁):大腿骨頭外側から大転子へ向かう弧状の骨梁
- Wardの三角:骨梁が交差する頚部内側の骨梁密度が低い三角形領域(骨折の好発部位)
- 皮質骨:
- 下方(内側)の皮質:厚く緻密
- 上方(外側)の皮質:比較的薄い
血管解剖
大腿骨頚の血管供給は臨床的に極めて重要です(Trueta & Harrison, 1953; Gautier et al., 2000):
- 主要血管供給:
- 外側大腿回旋動脈の上行枝(最も重要、大腿骨頭への主要血流)
- 内側大腿回旋動脈の枝
- 閉鎖動脈の枝(大腿骨頭靱帯を通る動脈 - 小児期以降は退縮)
- 血管走行の特徴:
- 関節包に沿って上行し、頚部後面から大腿骨頭へ進入
- 頚部骨折により容易に損傷される
- 関節包内骨折では大腿骨頭壊死のリスクが高い