中鼻甲介 Concha nasalis media
中鼻甲介は、鼻腔内の重要な骨構造であり、篩骨の一部を構成します。鼻腔側壁において上鼻甲介と下鼻甲介の間に位置し、呼吸生理学的および臨床的に重要な役割を果たしています(Stammberger and Kennedy, 1995; Lang, 1989)。

J0040 (篩骨:少し簡略化された後方からの図)

J0042 (右の篩骨迷路:内側からの図)

J0043 (右の篩骨迷路:外側からの図)

J0094 (頭蓋骨の前頭断、後方からの図)

J0095 (鼻腔の右側壁:左方からの図)

J0640 (頭部の前頭断、後方からの図)

J0674 (咽頭とその周囲の右半分:左側からの図)

J1072 (鼻腔の右壁と粘膜:左側からの図)

J1073 (中鼻甲介と下鼻甲介を除去した後の鼻腔の右壁と粘膜:左方からの図)
1. 解剖学的特徴
1.1 位置と形態
- 位置: 中鼻甲介は鼻腔側壁の中央部に位置し、上鼻甲介の下方約5-10mm、下鼻甲介の上方約10-15mmに存在します。鼻腔の前後方向には、鼻前庭から後鼻孔まで約3-4cmの長さで延びています(Gray, 2020; Standring, 2021)。
- 構造: 薄い骨板(厚さ0.5-1.0mm)で構成され、内側に凸面を向け、下端は外側に巻き込むような形状を呈しています。この湾曲構造により、中鼻道と呼ばれる空間が形成されます(Moore et al., 2018)。
- サイズ: 成人における中鼻甲介の平均的な長さは約30-40mm、高さは約15-25mm、前後径は約20-30mmです。ただし、個人差が大きく、性別や人種によっても変異があります(Navarro et al., 2002)。
1.2 骨性連結
- 前方付着部: 前端は上顎骨の篩骨稜(crista ethmoidalis)に接続し、しばしば鉤状突起(uncinate process)と密接な関係を持ちます(Stammberger, 1986)。
- 後方付着部: 後端は口蓋骨の篩骨稜に接続し、垂直板と水平板の移行部に付着します(Standring, 2021)。
- 上方付着部: 上方では篩骨の垂直板に付着し、篩骨天蓋(lamina cribrosa)との解剖学的関係が手術時に重要となります(Kennedy et al., 1985)。
1.3 組織学的構造
- 粘膜上皮: 中鼻甲介の表面は呼吸上皮(偽重層線毛円柱上皮)で覆われており、特に内側面では線毛細胞の密度が高く、粘液繊毛クリアランス機構において重要な役割を果たします(Messerklinger, 1978)。
- 固有層: 粘膜固有層には豊富な血管網と粘液腺が存在し、鼻腔内の加温・加湿機能を担います。また、リンパ球やマクロファージなどの免疫細胞も多数含まれ、局所免疫応答に寄与します(Cole, 2003)。
- 骨組織: 薄い皮質骨と海綿骨から構成され、時に骨内に含気腔(concha bullosa)を形成することがあります。この含気化は成人の約15-53%に認められる解剖学的変異です(Bolger et al., 1991)。
1.4 血管支配
- 動脈供給: 主に蝶口蓋動脈(sphenopalatine artery)の分枝である後鼻中隔枝と後外側鼻動脈、および前篩骨動脈(anterior ethmoidal artery)からの分枝により血液供給を受けます。これらの動脈は豊富な吻合を形成し、粘膜下に密な血管叢を構成します(Navarro et al., 2002)。
- 静脈還流: 静脈血は主に蝶口蓋静脈を経由して翼突筋静脈叢へ還流されます。また、前篩骨静脈を介して眼静脈系とも連絡しており、鼻腔感染症が眼窩合併症を引き起こす経路となりえます(Drake et al., 2019)。
- 微小循環: 粘膜下には動静脈吻合(arteriovenous anastomoses)が存在し、鼻腔内の温度調節と気流抵抗の調整に関与します。自律神経の制御下にあり、交感神経刺激により血管収縮、副交感神経刺激により血管拡張が生じます(Proctor and Andersen, 1982)。